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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは:アトピー体質のお子さんに、いろいろな刺激(衣服・洗剤・こする・ひっかくなど)が加わることによって起こります。他のアレルギー疾患と違い、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が特定しにくく、はっきりした原因はわかっていません。明らかに食事が関係していると思われる場合もありますが、すべての症例で食事が関係しているわけではありません。年令により皮膚炎のできやすい場所や状態が変わるのもアトピー性皮膚炎の特徴の1つです。 

症状

  • 乳児:赤ちゃんでは、多くの場合生後2ヶ月ぐらいから顔や頭にジクジクしたかさぶたの多い赤く盛り上がった湿疹ができ、とてもかゆがります。この時期からひどい皮膚炎が広範囲に見られるときは、食べ物が関係していることがありますので、血液検査などで、三大アレルゲンと言われる卵・牛乳・大豆を中心に調べてみる必要があります。もし、アレルゲンが特定された場合は、その食べ物を制限します。血液検査で100%陽性に出るわけではありませんので、検査が陰性でも、食事の関与が否定できないときには、試験的に除去食にして、症状の変化を観察する方法(除去試験)を試すこともあります。また、乳児では、乳児湿疹との区別が難しく、乳児湿疹として様子をみているうちに自然と良くなってしまうことも少なくありません。家族歴でアレルギー性疾患の素因がある場合や、耳たぶの付け根が赤く切れる「耳切れ」が見られるときには、アトピー性皮膚炎の可能性が高くなります。いずれにしても勝手に自己判断せず、小児科や皮膚科で継続して治療を受けるようにしてください。
  • 幼児:幼児期になるとこれまでジクジクしていた湿疹がカサカサしてむけるようになります。乾燥したカサカサ肌を基盤として、所々に赤みを帯びた少し堅くなった盛り上がりができるようになります。好発部位も、手首や足首、膝や肘の裏側などが目立つようになります。空気が乾燥する冬には特に悪化しやすくなります。

治療:治療は、スキンケアー、薬物療法、除去食(アレルゲンが特定できる場合)の3点からなります。

  • スキンケアー:治療の基本は肌の手入れ(スキンケアー)です。悪化の原因の1つに汚れがあげられますので、肌を清潔に保つことが大切です。基本的に毎日入浴し、刺激の少ない石鹸でさっと軽く洗ってあげます。汚れを落とすといっても強くゴシゴシこするのはいけません。もともとアトピーでは、皮膚がカサカサしていますので、皮膚の脂分を落としすぎない様にすることも大切です。きれいにしたあとは、指示された軟膏を毎日やさしくそっと塗ってあげましょう。よく効くようにとすり込むように塗るのは皮膚を刺激し、逆効果ですので注意しましょう。
  • かかない工夫:皮膚を強くこすったり、かいたりするのも悪化の原因の1つです。皮膚にできた細かい傷はかゆみの原因となります。アトピー性皮膚炎でかゆい→かゆいからかく→かくと傷が付く→傷ができてさらにかゆみが増す→またかく→傷が・・という悪循環となってしまいます。
    1. 普段から爪を切り、ヤスリをかけてなめらかにしておく。
    2. 暖まるとかゆみが増すので、熱いお風呂や長風呂をさける。
    3. 汗を吸収しやすく、柔らかい木綿の肌着などを使い、ちくちくする衣類はさける。
    4. 厚着をさけ、寝ているときには暖めすぎない。
    5. 洗剤や漂白剤、柔軟剤などが刺激になることがあるので気をつける。
    などの工夫も大切です。
  • 薬物療法
    1. 軟膏:軟膏にはステロイドの入っているもの、ステロイドの入っていないものとがあり、さらにステロイド入りの軟膏も強さによりさらに5段階程に分けられます。症状・部位(吸収率がちがいます)により、使用する軟膏の種類を変えますが、ステロイド入りの軟膏はご存じのように作用も強いが副作用もありますので、指示通りに使うことが大切です。使いすぎもいけませんが、ステロイドが怖いと言って勝手に量を減らしたりするとかえって悪化してしまう事があります。かかりつけの先生とのコンタクトを大切にしてください。
    2. かゆみが強い場合は、かゆみ止めとして抗ヒスタミン剤を内服します。この薬はほとんど副作用がありませんので長期に使用しても問題はありません。
    3. アトピー体質の改善を目的に、抗アレルギー剤を使う場合があります。このグループの薬剤は数ヶ月継続して服用することで、はじめてその真の効果が発揮されますので、続けて服用することが大切です。
  • 除去食:除去食はすべての例で必要な訳ではありません。研究者によりまちまちですが、本当に必要なのは10例に1例ぐらいと言われています。血液検査や皮膚試験などの結果を参考に、アレルゲンと考えられる食品を2〜3週間やめてみる除去試験を行い、その間の皮膚症状の変化を観察します。検査で異常が出ない場合でも、除去試験を行う場合もありますので、詳しい事は、かかりつけの先生にご相談下さい。この場合も、自己流はいけません。


ポイント:治療に関する心構えをいくつかあげてみました。

  • 長期戦を覚悟して:アトピー性皮膚炎は短期間でよくなる疾患ではありません。基本的にはいつになったら治るという事がはじめからわかっている訳ではありません。忍耐強く長期戦を覚悟で治療を続けることが大切です。コントロールを続けることで治癒する時期を早めることが期待できると考えられています。
  • 中途半端はだめ:よくなったので、薬をぬるのをやめたり、勝手に市販の薬を併用した、心配なので1日おきに薬を減らして使っていたなどの自己流式の中途半端な治療法は、感心しません。受け持ちの先生の指示に従ってください。アトピーの様に時間のかかる疾患ではある基本方針に沿って治療を続けることが大切です。中途半端では結局治るものも治らず、遠回りになってしまいます。
  • 浮気は禁物:雑誌などで、「これでアトピーが100%治る!」と言うような記事が載ったりします。そのような記事の多くは他の機関や学会などで広く効果が確認されたものではありません。また、まわりの人が親切心であれこれアドバイスをくれることもあります。ある人にとって効果があった方法が、他の人にも効果があるとは限りません。また、アトピーの治療はごく短期間で効果が確認できるものではありませんので、一度治療をはじめたら、途中で迷わずに一定期間治療を継続してみましょう。ある程度治療を続けたが、効果がでない場合には、受け持ちの先生に遠慮せずに相談してみましょう。
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