4.予防接種の対象となる病気と予防接種による副反応

ジフテリア・百日咳・破傷風

(1)病気の説明

(ア)ジフテリア(D)
 ジフテリア菌の飛沫(ひまつ)感染でおこります。
 1981年にジフテリア・百日せき・破傷風(DPT)ワクチンが導入され、現在では患者発生数は年間1〜2名程度ですが、ジフテリアは感染しても10%程度の人が症状が出るだけで、残りの人は症状が出ず、保菌者となり、その人を通じて感染することもあります。
 感染は主にのどですが、鼻にも感染します。症状は高熱、のどの痛み、犬吠様のせき、嘔吐(おうと)などで、偽膜(ぎまく)と呼ばれる膜ができて窒息死することがある恐ろしい病気です。発病2〜3週間後には菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺(まひ)を起こすことがありますので、注意が必要です。
 1990年前半に、DPTワクチンの接種率が低下した旧ソ連で流行がありました。予防接種を続けていかないと日本でも再び流行する可能性があります。

(イ)百日(ひゃくにち)せき(P)

 百日せき菌の飛沫感染で起こります。
 1956年から百日せきワクチンの接種がはじまって以来、患者数は減少してきています。当時は菌体の入ったワクチンでしたが、1981年以降では副反応の少ない精製ワクチンを使っています。
 百日せきは普通のカゼのような症状ではじまります。続いてせきがひどくなり、顔を真っ赤にして連続性にせき込むようになります。せきのあと急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱は出ません。乳幼児はせきで呼吸ができず、くちびるが青くなったり(チアノ−ゼ)けいれんが起きることがあります。脳炎や脳症などの重い合併症を起こします。乳児では命を落とすこともあります。
 1970年代後半に予防接種率が低下した際、百日せき患者が多数出て、113名の死者を出しました。このようなことを繰り返さないためにもぜひ予防接種を受けましょう。

飛沫感染(ひまつかんせん)
ウイルスや細菌がせきやくしゃみなどで細かい唾液(だえき)や気道分泌物につつまれて空気中へ飛びだし、約1mの範囲で人に感染させることです。

(ウ)破傷風(はしょうふう)(T)
 破傷風菌はヒトからヒトへ感染するのではなく、土の中にひそんでいて傷口からヒトへ感染します。傷口から菌が入り体の中で増えますと、菌の出す毒素のために、口が開かなくなったり、けいれんを起こしたり、死亡することもあります。患者の半数は自分や周りの人では気がつかない程度の軽い刺し傷が原因です。日本中どこでも土中に菌はいますので、感染する機会は常にあります。またお母さんが抵抗力(免疫)をもっていれば出産した時、新生児の破傷風も防げますので、ぜひ予防接種を受けておきましょう。


(2)DPT(ジフテリア・百日せき・破傷風)三種混合ワクチン

 T期として初回接種3回(3〜8週間隔で)、追加接種は1回(初回接種3回終了後1年〜1年半までに)受けるようにしましょう。また、U期として11・12歳時(通常6年生)にDT(ジフテリア・破傷風)二種混合ワクチンで追加接種を1回します。
 回数が多いので、接種もれに注意しましょう。
 確実な免疫をつくるには、決められたとおりに受けることが大切ですが、万一間隔があいてしまった場合でも、はじめからやり直すことはせず、規定の回数を越えないように接種します。かかりつけの医師に相談しましょう。

(3)DPTワクチンの副反応
 1981年に百日せきワクチンが改良されて以来、日本のワクチンは副反応の少ない安全なワクチンになっています。現在の副反応は注射部位の発赤(ほっせき)、腫脹(しゅちょう:はれ)、硬結(こうけつ:しこり)などの局所反応が主で、頻度に程度の差はありますが、初回接種1回目のあと、7日目までに14%、追加接種後7日目までに41.5%です。なお、硬結(しこり)は少しずつ小さくなりますが、数ヶ月残ることがあります。特に過敏な子で肘をこえて上腕全体が腫れた例が少数ありますが、これも湿布などで軽快しています。
 通常高熱は出ませんが、接種後24時間以内に37.5℃以上になった子が1.4%あります。重い副反応はなくても、機嫌(きげん)が悪くなったり、はれが目立つときなどは医師に連絡してご相談ください。

(4)接種期間

DPTT期:3ヶ月〜7歳半(T期初回は3ヶ月〜1歳までが推奨)
DPT二期:11歳から12歳(11歳が推奨)