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循環血液量が正常以上に増加した状態、具体的には、赤血球数600万/cmm、ヘモグロビン濃度18g/dl、ヘマトクリット値54%以上に増加した状態を赤血球増加症または、多血症と言います。
赤血球増加症の分類:赤血球増加症には以下のような種類が知られています。
  • 相対的多血症:循環血液量が正常にも関わらず相対的に赤血球数が増加している状態
    • 下痢、熱傷、発汗、嘔吐など:体液が喪失(脱水)して循環血漿量が減少した事による見かけ上の多血症
    • ストレス多血症:脱水などの明らかな原因がない相対的赤血球増加症。
  • 絶対的多血症
    • 真性多血症:原因不明の赤血球増加症で、赤血球造血が正常の制御を受けない疾患です。
    • 続発性赤血球増加症:酸素欠乏(高所住居者・心肺疾患)、エリスロポエチン産生腫瘍などに続発して見られます。
真性多血症
  • 定義・概念:原因不明の赤血球増加症で、赤血球造血が正常の制御を受けず、自律的に増殖します。慢性骨髄増殖症候群の1つとして、赤血球系・白血球系・血小板系3系統の増殖が見られますが、中でも赤血球系の増殖が顕著なものです。中年に多く、男性では女性の約2倍に見られます。
  • 症状:赤血球の増加に伴い血液の粘稠度が増すために、中枢神経系の循環障害による症状(頭痛・めまい・顔のほてり・のぼせ感・耳鳴りなど)が見られます。全身のかゆみ(特に入浴後)や高血圧もよくあります。また、皮膚(特に頬・鼻・くちびる)が赤く、粘膜は充血します。血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などは時に致命傷となります。更に、皮下出血、消化管出血、脳出血などが起こる事があります。
  • 検査所見:末梢血では、赤血球、白血球、血小板のすべてが増加します。但し、白血球数は数万まで、血小板数も100万を越えないことが普通です。他の検査所見は、表1を参照。
  • 診断:ストレス多血症と続発性多血症を除外する事が必要。主な鑑別点は表2を参照して下さい。polycythemia vera study groupの決めた診断基準を表1に示します。
  • 治療:瀉血(血液を抜いて捨てること)と化学療法(骨髄抑制剤)を組み合わせて赤血球数をコントロールします。
ストレス多血症:脱水などの原因がないにもかかわらず、相対的赤血球増加症を示します。成人男性に多く、赤ら顔・肥満・喫煙者・社会的な活動性が高いなどが典型的なパターンです。精神的な緊張状態にある場合によくみられ、入院などによりストレスから開放されると治癒することから、この名前がつけられました。高血圧、高脂血症、高尿酸血症などを合併する傾向が見られます。
慢性骨髄増殖症候群:Dameshekという人が提唱した概念で、真性多血症・慢性骨髄性白血病・本態性血小板血症・原発性骨髄繊維症の4疾患をまとめて呼びます。これらの疾患では相互移行が知られています。
真性多血症の診断基準(表1)
A基準 A1 循環赤血球量増大:男性 36ml/kg以上、女性 32ml/kg以上
A2 動脈血酸素飽和度正常(92%以上)
A3 脾腫
B基準 B1 血小板増加 40万/μl 以上
B2 白血球数増加 12000/μl 以上
B3 好中球アルカリフォスファターゼ値 上昇
B4 血清ビタミンB12 > 900pg/ml
診断 A1+A2+A3または、A1+A2+Bのうち2つ以上を満たす時に真性多血症と診断する
赤血球増加症の鑑別(表2) 真性多血症 続発性赤血球増加症 ストレス多血症
循環血液量 増加 増加 正常
脾腫
白血球数 増加 正常 正常
好中球アルカリフォスファターゼー 上昇 正常 正常
血小板数 増加 正常 正常
骨髄像 三血球系統過形成 赤血球過形成 正常
血清ビタミンB12 上昇 正常 正常
血清鉄 低下 正常 正常
エリスロポエチン 低下 上昇 正常