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糖尿病とは、インスリン(血液中のブドウ糖を筋肉、脂肪細胞、肝臓などに取り込むために必要なホルモン)が十分に分泌されなかったり、インスリンに対する反応が悪いなどのために血糖値が高い状態が続く疾患です。血糖値の高い状態が続くと全身の細小血管が障害されて網膜症、神経障害、腎症などの合併症が引き起こされます。糖尿病の怖さはこれらの合併症にありますが、その頻度は糖尿病にかかってからの期間が長いほど、また血糖のコントロールが悪いほど高くなりますので、糖尿病の治療は血糖のコントロールを良くして合併症の発生、進行を防ぐことを目的とします。 では、生活習慣の見直しという観点に特に注目して、糖尿病の治療について考えてみたいと思います。
糖尿病の患者さん5100人を過去10年間のヘモグロビンA1cの平均が7.0のグループと7.9のグループに分けて10年間追跡調査をして比較すると、7.0のグループでは、糖尿病関連の死亡が25%減少するほか細小血管症の発生が35%、心筋梗塞の発生は18%、脳卒中の発生は15%減少します。さらに、血圧について、収縮期血圧が150以上と130以下のグループに分けて比較すると、130以下のグループでは糖尿病関連死が38%、細小血管症の発生が37%、心筋梗塞の発生が21%、脳卒中の発生が44%、いずれも大幅に減少します。つまり、血糖値や血圧をコントロールすると合併症や糖尿病関連死の発生がかなり減らせることがわかりました。
食事療法:糖尿病の治療の中で最も基本となるのが食事療法です。適切な食事の量とバランスを守り、吸収されるブドウ糖の量を減らすことによって、インスリンの必要量が減り、膵臓への負担も軽くなり、インスリンの働きもよくなります。食事療法は基本的に一生続けるものでので、十分に理解して継続する事が大切です。薬物療法に頼って食事の注意をおろそかにすると薬の効果が打ち消されてうまくコントロールすることができなくなります。
  • 適正エネルギー量を守る まず、はじめに、自分がどれだけ食べてよいのか(適正エネルギー量)を知ることからスタートします。身長(m)x身長(m)x22で求められる標準体重に25〜30を掛けたのが適正エネルギー量です。たとえば、身長165cmの方でしたら、1.65x1.65x22x25〜30=1500〜1800キロカロリとなります。力仕事の方は35〜40を掛けてください。
  • 栄養のバランスをとる 三大栄養素(糖質・たんぱく質・脂質)の割合ですが、1日のエネルギーの約半分を糖質(ご飯・パン・うどん)でとります。残りの半分(全体の1/4)をたんぱく質(肉・魚・卵など)とし、残り(全体の1/4)を脂質、野菜、果物、乳製品に割り当てます。また栄養の偏りを防ぐために、1日30種類以上の食品を取ることを目標にしましょう。
  • 規則正しく食事をとる 食事はほぼ決まった時間に1日3回摂取しましょう。そうすることによって血糖値の変動リズムが整えられます。また、夜遅くの食事は良くありませんので、遅くても9時ぐらいまでには終わるようにして下さい。
  • 脂質の取りすぎに気をつける  脂質はカロリーが高い上に、インスリンの働きを妨げますので、とり過ぎないように注意しましょう(特に動物性の脂肪)。
  • 野菜、海藻類、きのこ類を積極的に 野菜や海藻類にはビタミンやミネラルが豊富に含まれております。また、海藻やきのこ類などの食物繊維が多い食品は吸収が遅く、食後血糖値の上昇を緩やかにしますのでたくさん食べてください。
  • 果物はほどほどに 果物に含まれている果糖は吸収がよいため、とり過ぎると急激に血糖が上がりますので要注意です。
  • お酒は控えめに 糖尿病にはウイスキーが良いという話を時々聞きますが、何を飲んでも同じです。日本酒は75ml、ビール200ml、ウイスキー35mlが1単位(80キロカロリー)です。特にアルコールを止められていない場合には、1日2単位ぐらいを上限として飲んでもかまわないでしょう。
運動療法:運動療法も食事療法同様、糖尿病の治療にとってはとても大切な事で、よく車の両輪にたとえられます。運動をすると血液中のブドウ糖が効率よく消費され、血糖値が低下します。さらに肥満が解消されるとインスリンに対する組織の感受性が高まり、インスリンの効きがよくなります。
 糖尿病の時に有効な運動は糖質と脂肪の両方を消費する有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)です。運動をはじめると最初に糖質が使われ始め15分ぐらいすぎると脂肪が燃焼し始めますので、少し息が乱れ、ややきついと感じるくらいの強さの運動を20〜30分、できれば毎日、少なくとも週に2〜3回は行ってください。血糖値の上がる食後1〜2時間頃に行うのが効果的です。空腹時や食直後は避けてください。ちなみに80キロカロリーを消費する運動時間は、ウォーキングで20分、水泳で11分、サイクリングで15分位です。
治療目標:いずれの場合でも、血糖値のコントロール状況を1〜3ヶ月毎(間隔は重症度によって異なる)にチェックすることが必要です。コントロールの目標は、空腹時血糖が110以下、食後2時間の血糖値が180以下、ヘモグロビンA1cが6.5以下です。自己判断せずに、客観的なコントロール指標に基づいて、自分の生活習慣を見直し、日々精進することで楽しい老後を送ることができるようにする事をお勧めしたいと思います。

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