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はじめに痛風とは、「風にあたったくらいでも痛い」ことがその名前の由来になっているくらい関節(足の指が有名)が痛む圧倒的に男性に多い(97〜98%)疾患ですが、この関節炎(痛風発作)は、痛風の1症状に過ぎません。痛風は体の中に「尿酸」という物質が異常にたまる体全体の病気です。血液の中の尿酸の高い状態が何年にもわたって続くと、体の中に尿酸が沈着し害をおよぼします。関節の中に沈着したものが、いわゆる痛風発作ですが、もっと恐ろしいのは腎臓の病気や動脈硬化が進んでいくことです。痛みがなくなったからと安心して放置しておくと、次第に内臓までむしばまれていく。これが痛風が本当に怖いところです。
尿酸とは:尿酸はプリン体という物質が肝臓で分解されてできます。プリン体は、遺伝子情報を担う核酸の主成分であると同時に、筋肉が使われるときのエネルギー伝達物質(アデノシン三リン酸)の元になる物質で、体にとっては欠かせないものですが、尿酸はそのプリン体が分解されてできる体には必要のない老廃物ですので、主に腎臓から尿に混じって体外に排泄されます。
高尿酸血症とは:通常は尿酸の合成と排泄のバランスがとれていますが、合成が過剰になったり、排泄が低下したりした時に、血液中の尿酸の値が高くなります。尿酸の正常値は、男性4.0〜7.0ml/dl、女性3.0〜5.5ml/dlで、尿酸値が7.5mg/dlを越えると、血液に溶けきれない分が結晶として沈着し、いろいろなトラブルを引き起こしますので、高尿酸血症と診断します。いわば痛風予備軍と言う状態で、9.0mg/dl以上の場合には、約90%の確率で数年以内に「痛風」を発症すると言われており、痛風発作が起きた事がなくても、治療の対象となります(右図を参照ください)。
血清尿酸値の目安
正常値 7mg/dl未満
食生活を気をつける 7〜8mg/dl
医療機関を受診する 8〜9mg/dl
内服薬服用が必要 9〜10mg/dl以上
  
高尿酸血症の原因:痛風や高尿酸血症の発症には体質(遺伝的素因)が関与しますが、それだけではなく、さらにいくつかの要因(生活習慣)が関与しております。尿酸値に影響を与える主な要因は次の様なものです。
  • 肥満:肥満があると尿酸の排泄が抑制されるために、尿酸値が高くなります。
  • アルコールの摂取:アルコールは尿酸の生成を促進する上に、腎からの排泄を阻害します。どのアルコールでも尿酸値を上昇させますが、ビールには尿酸の元になるプリン体が多く含まれておりますので、特に尿酸値を上昇させます。
  • プリン体の多く含まれている食物の摂取:内臓や肉汁などのプリン体を多く含む食物を好んで食べると尿酸値が上昇します。
  • 激しい無酸素運動:短い時間に筋肉を激しく使い、瞬発力を要求される運動でも尿酸値は上昇します。マラソン・ジョギング・水泳などの有酸素(エアロビック)運動では、尿酸値は上がりません。
高尿酸血症の現状:痛風の患者さんは年々増加しており、全国で30〜40万人、高尿酸血症の患者さんは600万人と推定されています。さらに、その数は年々増加してきております。また、発症年齢の若年化がみられ、最近では30歳台で発症する人が最も多くなっております。これは、欧米型の食生活への移行、アルコール摂取の増加、運動不足と過食により肥満の増加など生活習慣の変化が大きく関与しております。