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高尿酸血症に関係する生活習慣:痛風や高尿酸血症の発症には体質(遺伝的素因)が関与しますが、さらに、いくつかの生活習慣が関与していることが知られています。尿酸値に影響を与える主な要因は次の様なものです。
  1. 肥満:尿酸の排泄が抑制されるために尿酸値が高くなります。
  2. アルコール:尿酸の生成を促進する上に、腎からの排泄を阻害します。どのアルコールでも尿酸値を上昇させますが、ビールには尿酸の元になるプリン体が多く含まれているため特に尿酸値を上昇させます。
  3. プリン体:内臓や肉汁などのプリン体を多く含む食物を好んで食べると尿酸値が上昇します(表1参照)。
  4. 激しい運動:短い時 間に筋肉を激しく使い、瞬発力を要求される運動でも尿酸値は上昇します。一方、マラソン・ジョギング・水泳などの有酸素(エ アロビック)運動では、尿酸値は上がりません。
治療と予防:血清尿酸値が高いほど短期間の内に痛風になる可能性が高いので、高尿酸血症の方は血清尿酸値を正常範囲にコントロールし続けることで、痛風発作や腎障害・動脈硬化の進展などを防ぐことができます。治療は、食事療法を中心とする生活習慣の改善、薬物療法の二つから成り立っています。
生活習慣の改善1(食事)
  1. 総カロリーを制限します。これは、悪化因子の一つでもある肥満の解消にもつながり ます。
  2. プリン体含有量の多い食物(表1参照)をできるだけ避けます。
  3. アルカリ性の食品(野菜・海藻類・牛乳など)を多く取る様にしてください。尿が酸性ですと尿酸が溶けにくく、尿管結石や腎臓への尿酸の沈着の原因となるからです。
  4. アルコール(特にビール)は避けましょう。
生活習慣の改善2(食事以外の生活習慣)
  1. 普段から水分を十分に取り、尿量を多くしましょう。
  2. 適度な運動(20〜30分の早足歩き、自転車こぎ、水泳などの有酸素運動)を毎日継続して行いましょう。
  3. 精神的ストレスの発散に心がけましょう。
薬物療法(1):急性発作に対する治療
  • コルヒチン:急性発作の特効薬です。ただし、発作の前兆期あるいは初期に服用しないと効果がありません。通常、1錠(0.5mg)を数時間おきに服用します。発作が治った場合、副作用(吐き気、腹痛、下痢など)が出現した場合、総量が2mgに達した場合にはその時点で服用を中止します。長期連用では、脱毛、肝障害、骨髄障害などの副作用があるため、最近はあまり使われなくなってきています。
  • 非ステロイド抗炎症剤:いわゆる鎮痛解熱剤として使われている薬剤ですが、最近はこちらの薬を使用する場合が増えてきている様です。
薬物療法(2):高尿酸血症のコントロール
  • 生活習慣の改善でも尿酸値が9mg/dlを超えるような場合には、内服薬で尿酸を下げる治療が必要となります。尿酸を下げる薬には、尿酸産生阻害剤と尿酸排泄促進剤とがあります。
  • 尿酸産生阻害剤(アロプリノール「ザイロリック・アロシトールなど」):体の中で尿酸をできにくくする薬で、尿酸産生過剰型の患者さんや、腎障害・尿路結石合併例で主に使われます。
  • 尿酸排泄促進剤(プロベネシド「ベネシッド・プロベネミドなど」、ベンズブロマロン「ユリノーム」など):できてしまった尿酸を尿中へ追い出す薬で、尿酸排泄低下型の患者さんで主に使われます。このグループの薬剤を服用するときには、水分を十分に摂取して尿量を増加させ、尿をアルカリ性に保つために重曹やウラリットU等の尿アルカリ化剤を併用して、尿のpHを6.0〜6.5に維持する事が必要です。
  • どちらの薬剤を使用する場合でも、定期的に尿酸の値をチェックして、継続的に尿酸をコントロールすることが大切です。生涯にわたる治療が必要であることを十分に理解し、治療に取り組んでください。
痛風発作の既往がある場合では、尿酸を下げる薬を飲み始めると、体にたまった尿酸が溶け出して、逆に発作が起こりやすくなることがあります。これは、一種の関門みたいなものですので、指示をよく守り治療を止めないようにしてください。

表1 食品中のプリン体含有量 本文へもどる
プリン体の特に多い食品 牛ヒレステーキ(200g)84.6mg、豚ロースステーキ(200g)79.8mg、カツオ切身(80g)72.2 mg、車えび(80g)68.6mg、アジの干物(60g)65.3mg、さんまの切身(80g)54.4mg、まぐろの切身(80g)53.8mg、タ ラバガニ(100g)47.4mg、ヒラメの切身(80g)46.0mg、まだこ(80g)45.8mg
アルコール飲料 ビール大瓶1本32.4mg、日本酒1合2.2mg、ワイングラス1杯1.0mg、ブランデー(40ml)0.2mg、ウイ スキー(80ml)0.1mg、焼酎お湯割り1杯0.0mg
プリン体の比較的少ない食品 鶏肉ささ身(30g)20.1mg、干し椎茸5個(10g)18.6mg、大豆(20g)16.8mg、かまぼこ 4枚9.8mg、精白米(65g)8.2mg、ウインナーソーセージ(30g)5.9mg、えのきだけ(20g)4.9mg、プロセスチーズ(25g) 0.7mg