高血圧の診断・治療の指針としては、色々なものが出されていますが、1997年11月に改訂されました米国合同委員会の第6字報告(JNCーY)をここで取り上げてみます。
■血圧分類(表1):18歳以上の成人で、降圧剤を服用せず、急性疾患に罹患していない人を対象としています。今回血圧は、至適、正常、正常高値、高血圧(ステージ1〜3)に分類されました。新しく設定されました至適血圧とは、標的器官である脳・心・腎などの臓器障害をおこさないために正常値よりもより理想的な血圧値ということで設定されたものです。
表1
分類 収縮期血圧 0 拡張期血圧 至適血圧 <120 かつ <80 正常 <130 かつ <85 正常高値 130〜139 または 85〜89 高血圧 ○ stage1140〜159 または 90〜99 stage2160〜179 または 100〜109 stage3≧180 または ≧110 ※収縮期血圧と拡張期血圧が異なるカテゴリーに入る場合は、より重症のカテゴリーにいれる(例えば、160/90の場合は収縮期血圧から言えばstage2、拡張期血圧から言えばstege1ですので、より重症のstage2と分類します)。
※収縮期血圧が140以上で、拡張期血圧が90未満の場合は、収縮期高血圧と定義し、同様の分類をします(例えば、170/80はstage2の収縮期高血圧と分類します)。
※高血圧の診断にあたっては、少なくとも2回以上診察し、そのたびに2回以上血圧をはかります。その平均値にもとづいて、高血圧を診断します。
■リスクの階層分類と治療法(表2)
表2 ○ リスク分類 リスクA群 リスクB群 リスクC群 臓器障害・危険因子共になし 臓器障害はないが糖尿病以外の危険因子がある 臓器障害または糖尿病がある 高
血
圧
分
類正常高値 ライフスタイル修正 ライフスタイル修正 薬物療法 stage1 ライフスタイル修正
(12ヶ月まで)ライフスタイル修正(6ヶ月まで) 薬物療法 stage2
以上薬物療法 薬物療法 薬物療法 臓器障害とは:脳・心臓・腎臓・大動脈などの障害。他に心血管疾患も含まれます。
危険因子とは:喫煙・高脂血症・糖尿病・60歳以上、男性・閉経後の女性、家族歴など
■治療:今回の治療指針では、生活習慣を改めることが強く強調されていることがポイントの一つです。どのグループもライフスタイルの修正をした上で、薬物療法を併用することになりました。また薬物療法も、無作為臨床治験の結果を反映した科学的な立証に基づく治療の考え方を取り入れたものとなりました(表3)。
表3 高血圧治療のアルゴリズム ライフスタイルの修正開始・継続 ▼ 目標血圧(<140/90mmHg)に達しない (糖尿病、腎疾患合併例では<135/85mmHg) ▼ 初期段階での治療薬物選択(禁忌例を除く) 合併症を伴わない高血圧
- 利尿薬
- β遮断薬
以下の薬物については病態に応じた適応症あり
- ACE阻害薬
- アンギオテンシンU受容体拮抗薬
- α遮断薬
- αβ遮断薬
- Ca拮抗薬
- 利尿薬
合併症を伴う高血圧
●心筋梗塞 ●蛋白尿を伴う糖尿病(インスリン依存型)●心不全
- ACE阻害薬
●収縮期高血圧(高齢者)
- ACE阻害薬
- 利尿薬
- 利尿薬
- 持続性Ca拮抗薬
- β遮断薬(非内因性交感神経刺激型)
- ACE阻害薬(収縮期機能不全を伴う)
持続性1日1回で済む薬物を低容量で開始し、容量調節する
低用量併用療法が適切な場合もある。▼ 目標血圧に達しない ▼ ▼ 反応なし、もしくは重大な副作用 反応不十分であるが忍容性良好 ▼ ▼ 他の薬物群の薬物に切り換える 他の薬物群にの薬物を併用する
(まだ使用していない場合は利尿剤)▼ ▼ 目標血圧に達しない ▼ 他の薬物群をさらに加える 又は 高血圧専門医の紹介を検討する
ライフスタイルの修正(本文へもどる)
- 肥満の改善
- アルコール摂取量の制限(1日30ml以下):ビール 720ml、ワイン 300ml 、女性および体重の少ない男性は半分まで。
- エラロビック(有酸素性)な運動:毎日30〜45分、早足の散歩・ジョギング・水泳などを行う。
- 食塩の制限:1日6g以下
- 十分なカリウム(90mmol以上)、カルシウム、マグネシウムなどの摂取
- 禁煙
- 高脂血症の是正:コレステロール・飽和脂肪酸の摂取制限