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高血圧症の治療の目的は、血圧を正常域に保つことにより、高血圧が持続することによってもたらされる心臓や腎臓の臓器障害や動脈硬化進行の結果としての脳卒中や心筋梗塞などの合併症を防ぐことにあります。
高血圧の治療:高血圧の治療は、薬物療法と非薬物療法に分けられます。現在では優れた降圧剤があり、比較的容易に血圧のコントロールができますが、薬物療法のみでは動脈硬化の進行を十分に抑えることはできません。食事や運動、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣は、高血圧症のみならず、高脂血症や肥満などほかの動脈硬化の危険因子にも大きく影響しますので、生活習慣の見直しが非常に大切です。軽症例では、非薬物療法のみで十分に血圧のコントロールが可能ですし、服薬が必要なケースでも生活習慣の改善で降圧剤が減量できる場合も少なくありません。では、高血圧症の日常生活のポイントを見ていきましょう。
食塩の制限:食塩が体の中に多く入ると、その塩分を薄めるために水も増えてしまいます(塩分の濃度を一定に保とうとする仕組みが働いているからです)。その結果、血液の量と脈拍数が増え、血圧が上昇します。また、食塩に含まれるナトリウムは、血管を収縮させたり、交感神経を刺激することで血圧を上げる作用のあることもわかっています。 現在の日本人の平均食塩摂取量は12〜13gと言われています。一方、世界保健機構(WHO)などが推奨している塩分摂取量は6gですので、倍近く摂取している事になります。いきなり半分近くに減らすことは難しいので、1日8〜10g以下をめざしてください。

 減塩を成功させるために、色々なアイディアが出されていますが、まず、食事に含まれる塩分の量を知る事が大切です。ほとんどの方は自分はそれほど食塩をとっていないと思っていますが、梅干し1個(2.5g)、たくあん2切れ(2g)、みそ汁1杯(1.8g)、うどん1杯(5g)、ラーメン類5〜6g)、幕の内弁当(4.5g)、にぎり寿司1人前(5g)、○○定食(5〜6.5g)、XX丼(4〜5g)など予想以上に多いものです。

 塩分摂取を減らす為には
  1. 味付けを薄味にする はじめは物足りないと感じますが、続けているうちに慣れてきて、薄味でも不満を感じなくなれば大成功です。昆布だしや香辛料、酢、レモンなどを上手に使って味を引き締めましょう。
  2. 汁はできるだけ飲まない みそ汁は具だくさんにして汁は残すのが理想。ラーメンやうどん・そばの汁は飲まないか3口までで我慢しましょう。
  3. 食卓でしょうゆや塩を使わない しょうゆやソースのかけすぎに気をつけましょう。刺身などもしょうゆは極力少なくつける様にし、また普段から減塩しょうゆにするのも良いアイデアです。
  4. 外食やインスタント食品をさける 外食やインスタント食品には、どうしても塩分が多く含まれていますので、注意しましょう。味のうすいものから食べていく工夫なども有効。外食が続く時には塩分量の少ないものを選びましょう。
  5. 家族全員で 子供のうちから薄い味に慣れている事は、高血圧の予防にとって非常に有意義な事です。ですから、家族皆で減塩に取り組むことが理想です。 
カリウムの多い野菜や果物をとる:カリウムには腎臓でナトリウムの排泄を促す作用がありますので、カリウムを積極的に摂取しましょう。カリウムは新鮮な野菜や果物に多く含まれています。また、カルシウム(牛乳・小魚)やマグネシウム(海草類・穀類)にも血圧を下げる作用があると考えられていますので、骨粗鬆症の予防もかねて、しっかりととりましょう。
たばこはやめましょうたばこはそれ自体が動脈硬化の危険因子であるばかりか、心筋梗塞や狭心症の発作の引き金になります。たばこを吸うと一時的に血圧が上がりますので、たばこを吸っている時間そのものも危険に身をさらす事になります。
お酒は適量に:アルコールは飲めば飲むほど血圧が上がりますが、適量であればストレスを解消し、食欲を増し、睡眠を促し、動脈硬化を予防するなどの好ましい効果もありますので量を守ることが大切です。具体的にはビール大びん1本、ウイスキーダブル1杯、日本酒1合が適量です。ただ、お酒のつまみには塩分が多いのでご注意を!
 ちなみに代表的なおつまみに含まれる塩分量は、焼き鳥1本(1g)、枝豆200g(2g)、もろきゅう(2g)、おでん1皿(4.6g)です。
運動を積極的に:運動でなぜ血圧が下がるのかについては、まだよくわかっていませんが、高血圧の患者さんを運動群と非運動群に分けて比べてみると、運動を続けていると血圧が下がってくることがわかっています。血圧のコントロールに適しているのは、早足歩行・ジョギング・サイクリング・水泳・エアロビクスなどの有酸素運動です。できれば週3回以上、1日40〜50分行えると効果的ですが、改まって始めようとするとなかなか実行できないものです。通勤や買い物などを利用して、一つ前のバス停で降りて歩く(片道15分X2)など生活の中に上手に取り入れるのが長続きするコツかも知れません(高血圧ですでに治療中の方は、事前に主治医の先生に運動の強さを相談してください)。
肥満を解消:肥満を解消すると血圧も下がってきます(10kgで約10mmHg)。肥満自体が動脈硬化の危険因子でもありますので、肥満の方は肥満のコントロールに是非挑戦してください。