土川内科小児科ニュース 2月号 No.37 (もどる)今月のテーマ:花粉症
今年の冬は暖冬ということで、インフルエンザも散発的には発生しているものの、今のところ昨年の様な大流行にはならずに済んでいるようです。今シーズンはインフルエンザワクチンを受ける方が多かったことが大流行を未然に防ぐ効果があったのかどうかは、今後解析に待たなければなりませんが、一安心という所でしょうか。 ところで、インフルエンザの流行が一段落すると、次は花粉症の季節です。花粉症については、これまでも何度か取り上げていますが、今年はまた別の切り口から花粉症について解説してみたいと思います。 | |
先日発表された今年のスギ花粉の飛散予報によると、東日本で多く西日本では少ないとのことですが、この予報はどのようにして出されるのでしょうか。スギ花粉をまき散らす雄花の量は、前年の7〜8月初旬の気候条件で左右され、なかでもおおきな影響を与えるのが、日射量と降水量と考えられています。昨年の7〜8月初旬の気温は、関東・東北・北海道地方で平年より高く、日照時間もほぼ同じ状況でした。降水量については、7月中旬に多かったものの、これは集中豪雨的なもので、関東から東北地方にかけては総じて雄花の成長にとって好条件がそろっていました。実際のスギ花粉飛散数の推定は、このような気象条件のほかに、雄花がどれくらい着生しているか、一房につく雄花の数や重量はどうかといった調査の結果を加味して行われます。その結果、今年の花粉飛散量は、平年の1.7倍(多い所では2.9倍)と発表されました。 | |
次に、スギ花粉の飛散開始時期はどうやって推定しているのでしょうか。スギ花粉の飛散開始は、最高気温を積算した数が400を越えると始まると言われています。例えば、 東京を例に取ると、1月の最高気温の平年値が9.5度、2月が9.7度ですから、(400-9.5x31)÷9.7≒11(日)となり、気温が平年並みで経過すれば、2月11日頃がスギ花粉の飛散開始日の目安の1つになるわけです。もう一つは、飛散日が近づいてきた頃に、最高気温が15度を越えると継続した飛散が始まることが多くなります。 以上の事を総合的に判断して、今年は東京の飛散開始日が平年より10日前後早く、2月7日頃と発表されました。福島県は東京から約10日前後遅れますので、2月17日頃が飛散開始日と推定されます。 | |
では、いつまで飛んでいるのでしょうか。これは、毎年の観察から、大体福島県では、5月のゴールデンウィークの頃までと言われています。但し、ひのきに対しても反応する方は、5月いっぱい症状が続きますのでご注意下さい。 | |
今年は、東京都が調査を開始して以来、最も飛散花粉数が多かった1995年に次ぐ飛散数で、しかも飛散している日数も例年より長いと言われております。しかも1996年以降、花粉の飛散数は平年以下で、木に養分が蓄えられているとみられることなどから、場所によっては1995年を上回る場合もありそうとも言われており、飛散数が少なかった昨シーズンに比べると最大10倍も多く飛散するとみられるだけに、注意が必要です。ここ数年軽かった方も今年は十分な対策を講じるべきでしょう。 | |
実際シーズンに入った後、どんな日にスギ花粉の飛散が多いかを知っておくことは対策を立てる上でも役に立ちます。スギ自身は、花粉をできるだけ遠くまでとばし、遠く離れたところにあるスギの雌花を受粉させる事が目的ですので、花粉が遠くまで飛んで行きやすい気象条件の時に、大量に飛散させます。その気象要素としては、風・天気・気温が関係します。 | |
はじめに風ですが、風が強い(10m/秒)程遠くまで飛散するチャンスが大きくなります。風向きでは、北風の時より南風の日の方が花粉が飛びやすくなります。南風の日には暖かな日が多いからです。但し、スギ林が近い山間では、風が弱い日の方が、花粉が飛散せずに花粉の量は多くなります。 | |
天気に関してですが、晴れの日は、日射による上昇気流が起こり、花粉は遠方まで飛散しやすくなります。これに対して、曇りの日は上昇気流は少ないのですが、気温が高く強風の場合には、飛散数が多くなります。 雨上がりの翌日は2日分の花粉が飛散することがありますので、要注意です。 | |
最後に気温ですが、最高気温が10度以下の寒い日は飛散数は少ないことが多い事がわかっています。 実際にはテレビや新聞の天気予報のコーナーで、花粉症のシーズンとなりますと色々な気象条件を考慮してその日の飛散予想が詳しく載りますので、それを参考にするのが良いと思います。 |
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最後に花粉症の最近の治療について触れてみたいと思います。新しい花粉症治療薬は色々と出てきておりますが、まだ脱感作療法などの根治療法は確立されておりません。症状をコントロールする治療が中心となります。特に強調されているのは、シーズンに突入し症状が強くなってからではなく、その前に治療を開始する事です。早い時期からの服用を開始すると、あまり重症化せず、発症しても軽くすむ事が色々な研究でわかっているのです。具体的には花粉飛散予想日の約2週間前から抗アレルギー剤を服用します。そしてそれをシーズン終了まで続けるわけです。 次に大切なことは、自分の症状にあわせた治療を行う事です。一口にスギ花粉症と言っても軽症から重症まで色々なランクに分けられます。治療薬にも色々な強さのものがありますので、重症の方には強い薬を、軽症の方には作用の穏やかな薬をという使い分けをします。尤も、長年花粉症とつき合っている患者さんは、自分にあった治療薬の組み合わせをすでにご存じですので、いつもの薬でお願いしますと言うことで間に合ってしまう事がほとんどです。ただ、花粉の飛散の多い年には、従来の組み合わせでは症状をコントロールできないこともありますので、そのような時には遠慮しないで、主治医に相談しましょう。 ある週刊誌に花粉症の究極の治療薬として、副腎皮質ホルモンの事が仰々しく載ってました。確かに、この薬剤は強い抗炎症作用・抗アレルギー作用を持っていますが、たくさんの重篤な副作用も持っておりますので、花粉症の専門家は通常あまり使いません。何か特別な理由がなければ、安易に使うべきではないと私は考えております。 本当に不愉快な花粉症ですが、コントロールできない病気ではありません。色々と工夫して上手に乗り切りましょう。 |
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