土川内科小児科ニュース 9月号 No.44 (もどる)
今月のテーマ:子供の事故防止
9月に入ってもまだまだ残暑が厳しい様ですが、いかがお過ごしでしょうか。こうも暑いと寝不足で注意も散漫になり、ついうっかりのミスも多くなりますのでご注意下さい。ところで、1960年以降の0歳を除いた小児の死亡原因の第一位をご存じですか。死因の第一位は「不慮の事故」によるものです。他の先進国と比較しても我が国の乳幼児の事故による死亡率は高く、注意が必要なのです。そこで、今月は乳幼児の事故防止をテーマとして取り上げてみました。 |
■誤飲・誤食:乳幼児の誤飲は当院でも時々外来で経験します。当院で経験したものでは、一番多いのがタバコの吸い殻ですが、そのほかに風邪薬のシロップの一気のみ、パチンコ玉、プラスチック製おもちゃの破片、アルミ箔、クリップ、水銀体温計の水銀、泥水、生の肉、おはじき、大人の薬など(順不同)。乳幼児は何でも口に持っていきますので、危険なものは周りにおかない事が大切です。直径32ミリ、長さ57ミリの筒を作り、その中に入るものは飲み込んでしまう可能性がありますので、気を付けて下さい。まさかこんなものは飲み込まないだろうというものを飲み込んでしまうのです。子供に大人の常識は通用しませんので油断は禁物です。飲んでしまった場合の対応ですが、まず、落ち着いて何をどのくらい飲んでしまったのかをできるだけ正確に調べて下さい。次に飲んでしまったものが安全なものか危険なものかの確認をします。安全かどうかがわからない時には、その商品のメーカーに安全かどうかを確認します。問い合わせ先がわからない時には、日
本中毒情報センター中毒110番(0990 52 9899)などを利用すると良いでしょう。 パチンコ玉や硬貨などの固形物を飲み込んでしまった場合、大きさが1円玉以下で、鋭い突起などがない場合には自然に排泄されますので、便をチェックして様子を見てるだけで大丈夫ですが、ボタン型電池など1カ所に留まると放電(電気分解反応)が起こり、食道や胃の粘膜を腐食したり、胃に穴があく危険がありますので、摘出が必要な場合もあります。 食べ物でも、注意が必要です。3歳を過ぎるまでは、気管に詰まりやすいあめやピーナツなどの乾いた豆類は食べさせないようにしましょう。 タバコの場合、2センチ以下であれば大丈夫です(乳幼児ではタバコ1本に含まれるニコチンが致死量です)が、それ以上食べた場合や、水に浸っていたタバコを食べたり、その液を飲んだ場合(ニコチンが溶け出ています)には、胃洗滌などの早急な対応が必要となります。どのくらい食べたのかわからないケースも少なくありませんが、危険な量を食べていればケロッとしてはいられず、顔色が悪い、頻回の嘔吐を繰り返す、腹痛や下痢、よだれが多く出るなどの症状が見られますので、そのような症状が見られない場合には、約4時間注意深く様子を観察し、何もおこらなければ大丈夫です。 もう一つ困った問題に、医薬品を過量に飲んでしまう事故(3歳前後の幼児に多い)を時々経験します。自分の薬の事も兄弟がもらった薬の事も、大人の薬の事もあります。水薬の場合には、ジュース感覚で全部飲んでしまったりするようですが、配合されている薬の種類によっては、生命に係わる一大事となることもあります。特に気管支炎などで良く使用される気管支拡張剤が配合されている場合には、過量摂取で心停止や重篤な不整脈が起こりますので、厳重な注意が必要です。私も何度か自分が処方したお薬で一気飲みされてしまい、幸い大事には至りませんでしたが、最近は特に危険な気管支拡張剤はドライシロップで処方する事が多くなりました。医薬品は量を間違えると大変な事になりますので、子供が手の届くところに置いたり、子供の目の前に置いたまま目を離したりする事のないように管理して下さい。 |
■やけど やけども時々経験(生後6か月頃から2歳半までが多いようです)します。体が小さいために、やけどの占める割合が多くなり、また皮膚が薄いために深いやけどになりやすいので注意が必要です。ストーブやアイロン、ホットプレートなどのほか、コーヒー、カップラーメンのお湯などが原因としてよく見られます。まさかという様な通常では予測できない動きをする事がありますので、やけどがおこりうる状況を作らない事が一番大切です。目を離さないつもりでもちょっとした瞬間に起きてしまうのが事故なのです。もし、やけどをしてしまったら、水道水でよく冷やし、ナイロン袋に氷水を入れて冷やしながら、医療機関を受診して下さい。この際、やけど部分に軟膏を塗ったり油を付けたり、水ぶくれを破ったり一切しないで、受診して下さい。 |
■転落事故 ベランダや窓際、階段から転落する事故が時々報道されます。歩き出す1歳過ぎになると可能性が高くなりますので、事故防止のため、ベランダや窓際には踏み台になるようなものを置かない、窓や階段には柵を付けるなどの対策が必要です。 転落事故で注意が必要なのはお風呂です。お風呂では転落のほかに、おぼれる(たった5センチの水でもおぼれる)可能性があります。3歳以下の子供がお風呂場に1人になる様な事は、ほんの一瞬でもないように気を付けて下さい。一緒に入っていてもシャンプーをしている間に、タオルを取りにちょっと目を離したすきにおぼれていたと言うような事が報告されています。 |
■車での事故 車に関連する事故で時々耳にするのは、車内に残された乳幼児が熱中症になることです。たとえ短時間でも乳幼児を車内に放置する事は避けて下さい。ちょっとのつもりが何らかの事情で長引いてしまった時、そんな時に事故が起こるのです。また、平成12年の4月から、6歳以下の乳幼児を自動車に乗せるときには、チャイルドシートを着用する事が義務づけられました。チャイルドシートも種々のものがありますので、親の都合ではなく子供本位で、安全性に重点をおいて慎重に選び、マニュアルを良くお読みになって正しく使って下さい。子供の事故とはちょっと違いますが、最近運転中に携帯電話をかけている方を良く見かけます。危険なので運転中はドライブモードにして下さいね。 |
誤飲・誤食の大丈夫目安(大まかな目安です)
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