土川内科小児科ニュース 11月号 No.46 (もどる)
今月のテーマ:高血圧症(その2)
朝晩ストーブが恋しい季節になりました。今年の夏は猛暑が続き、また残暑も厳しかったのですが、きちんと季節は巡ってくるようで、だいぶ涼しくなってきました。 高血圧症については、平成10年10月(21)号で総論的に取り上げましたが、今回は、各論(その1)として、非薬物療法(日常生活のポイント)についてまとめて見ました。 高血圧症の治療の目的は、血圧を正常域に保つことにより、高血圧が持続することによってもたらされる心臓や腎臓の臓器障害や動脈硬化進行の結果としての脳卒中や心筋梗塞などの合併症を防ぐことにあります。 |
■高血圧の治療:高血圧の治療は、薬物療法と非薬物療法に分けられます。現在では優れた降圧剤があり、比較的容易に血圧のコントロールができますが、薬物療法のみでは動脈硬化の進行を十分に抑えることはできません。食事や運動、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣は、高血圧症のみならず、高脂血症や肥満などほかの動脈硬化の危険因子にも大きく影響しますので、生活習慣の見直しが非常に大切です。軽症例では、非薬物療法のみで十分に血圧のコントロールが可能ですし、服薬が必要なケースでも生活習慣の改善で降圧剤が減量できる場合も少なくありません。では、高血圧症の日常生活のポイントを見ていきましょう。 |
■食塩の制限:食塩が体の中に多く入ると、その塩分を薄めるために水も増えてしまいます。その結果、血液の量と脈拍数が増え、血圧が上昇します。また、食塩に含まれるナトリウムは、血管を収縮させたり、交感神経を刺激することで血圧を上げる作用のあることもわかっています。 現在の日本人の平均食塩摂取量は12〜13gと言われています。一方、世界保健機構(WHO)などが推奨している塩分摂取量は6gですので、倍近く摂取している事になります。いきなり半分近くに減らすことは難しいので、1日8〜10g以下をめざしてください。 減塩を成功させるために、色々なアイディアが出されていますが、まず、食事に含まれる塩分の量を知る事が大切です。ほとんどの方は自分はそれほど食塩をとっていないと思っていますが、梅干し1個(2.5g)、たくあん2切れ(2g)、みそ汁1杯(1.8g)、うどん1杯(5g)、ラーメン類5〜6g)、幕の内弁当(4.5g)、にぎり寿司1人前(5g)、○○定食(5〜6.5g)、XX丼(4〜5g)など予想以上に多いものです。 塩分摂取を減らす為には、
|
■カリウムの多い野菜や果物をとる:カリウムには腎臓でナトリウムの排泄を促す作用がありますので、カリウムを積極的に摂取しましょう。カリウムは新鮮な野菜や果物に多く含まれています。また、カルシウム(牛乳・小魚)やマグネシウム(海草類・穀類)にも血圧を下げる作用があると考えられていますので、骨粗鬆症の予防もかねて、しっかりととりましょう。 |
■たばこはやめましょう:たばこはそれ自体が動脈硬化の危険因子であるばかりか、心筋梗塞や狭心症の発作の引き金になります。たばこを吸うと一時的に血圧が上がりますので、たばこを吸っている時間そのものも危険に身をさらす事になります。 |
■お酒は適量に:アルコールは飲めば飲むほど血圧が上がりますが、適量であれば、ストレスを解消し、食欲を増し、睡眠を促し、動脈硬化を予防するなどの好ましい効果もありますので、量を守ることが大切です。具体的にはビール大びん1本、ウイスキーダブル1杯、日本酒1合が適量です。ただ、お酒のつまみには塩分が多いのでご注意を!ちなみに代表的なおつまみに含まれる塩分量は、焼き鳥1本(1g)、枝豆200g(2g)、もろきゅう(2g)、おでん1皿(4.6g)などなど。 |
■運動を積極的に:運動でなぜ血圧が下がるのかについては、まだよくわかっていませんが、高血圧の患者さんを運動群と非運動群に分けて比べてみると、運動を続けていると血圧が下がってくることがわかっています。血圧のコントロールに適しているのは、早足歩行・ジョギング・サイクリング・水泳・エアロビクスなどの有酸素運動です。できれば週3回以上、1日40〜50分行えると効果的ですが、改まって始めようとするとなかなか実行できないものです。通勤や買い物などを利用して、一つ前のバス停で降りて歩く(片道15分X2)など生活の中に上手に取り入れるのが長続きするコツかも知れません(高血圧ですでに治療中の方は、事前に運動の強さを相談してください)。 |
■肥満を解消:肥満を解消すると血圧も下がってきます(10kgで約10mmHg)。肥満自体が危険因子でもありますので、肥満の方は肥満のコントロールに是非挑戦してください。 |
インフルエンザワクチンについて 今年もインフルエンザワクチン接種の時期になりました。私は以前より、積極的な治療法が確立していない現状では、脳炎・脳症や心筋炎など重症化を防ぐためにはワクチンの接種を受けておく事は十分考慮に値すると考え、インフルエンザワクチンの接種をおすすめしております。 生物学的製剤基準が平成12年6月より一部改正となり、高齢者や基礎免疫を期待できる成人では、これまで2回行われてきたインフルエンザワクチンの接種が1回でも可となりました。これは、65歳以上の高齢者に対するインフルエンザワクチンの有効性を検討した結果、接種回数は1回で十分との調査結果に基づくもので、65歳以下の年齢については明白な根拠があってのことではありません。従って、それ以下の年齢に対しては今まで通り2回接種が原則です。 具体的には、13才から64才の人で、ここ2−3年インフルエンザにかかったことが明らかな人や昨年ワクチンを2回受けた人で、1回接種を希望する方は1回でもOKと思いますが、それ以外の方は今年もやはり2回お受けになることをおすすめ致します。なお、13歳未満については用法及び用量に変更はなく2回接種です。 |
トップへ |