土川内科小児科ニュース 1月号 No.48 (もどる)
今月のテーマ:小児の肥満
あけましておめでとうございます。ついに21世紀がやってきました。皆さんどのように新しい年をお迎えでしょうか。今年も皆様のご清福を心よりお祈りいたします。 |
21世紀、類をみない高齢化社会を迎えるにあたって、国は生活習慣病の1次予防活動に力点を置いた「健康日本21」と呼ばれる運動を昨年から全国的に展開しておりますが、特に栄養・食生活分野については、小児期を視野に入れた活動が重要であることが指摘されています。小児肥満が成人の肥満に移行する確率は40〜85%と言われています。小児肥満から成人の肥満に移行しやすい条件としては、肥満の発生が乳児期以降であること、肥満の程度が高度であることが上げられています。504名の肥満小児を40年にわたって追跡調査したMossbergの報告によると、47%が成人後も肥満であり、成人してからの有病率・死亡率は一般対象群と比較して優位に高く、死亡原因として最も高かったのは心血管性の疾患でした。 |
■良性肥満と悪性肥満:小児の肥満には良性と悪性の2つのタイプがあります。良性肥満は乳児期に太りだし、満1歳以降に軽度肥満か正常上限の体重で経過するタイプで、病気として扱う必要はありません。これに対し悪性肥満は、幼児期以降に急激に体重が増加していくタイプで、肥満に基づく健康障害(肥満症)につながりやすい上、高率に成人肥満に移行しますので小児期の管理が重要です。良性か悪性かの判定は、ある一時点での身長と体重から判断するのではなく、過去の身長と体重の計測値から成長曲線のパターンの流れを検討する事がポイントとなります。 |
■乳児の肥満:かつては乳児期の肥満は脂肪細胞の増加を伴うので、積極的に治療をすべきであると考えられていましたが、その後の研究で脂肪細胞が増殖するのは乳児期に限ったことではなく、肥満が高度になればどの年齢においても脂肪細胞が増殖する事が明らかになりました。また、1歳までの乳児の体型は学童期の体型とあまり関係しません。乳児期に肥満であっても、1歳を過ぎて歩き始めるようになると肥満が急速に軽快していくからです。従って成長・発達の最も著しい乳児期にはよほどのことがない限りミルクや食事の制限は行わず、積極的に屋内・屋外での運動を取り入れるなど消費エネルギーを高める努力をします。 |
■幼児の肥満:幼児の肥満が乳児の肥満と決定的に異なる点は、学童期以降の肥満につながる可能性を持っている事で、適切な対応が必要となります。幼児の肥満を判定する方法には色々なものがありますが、肥満度を用いるのが一般的です。肥満度は、実測体重から標準体重を引き、それを標準体重で割り、100をかけたもので、幼児では肥満度15〜19%を軽度肥満、20〜39%を肥満、40%以上を高度肥満と判定します。このほかには、カウプ指数を用いることもあります。カウプ指数は体重÷身長÷身長×10で、14〜18が正常範囲です。カウプ指数18が肥満度15%、カウプ指数19が肥満度20%に相当します。軽度肥満(肥満度15〜19%)では、母子手帳の身長別標準体重曲線を活用して、肥満度が20%を越えないように経過を観察します。20〜39%では、後で述べるような食事やおやつに関して注意をする一方、屋外での運動を積極的に取り入れ、肥満の是正に取り組みましょう。40%以上の高度肥満の場合には、小児肥満治療の専門機関での治療が必要です。 |
■学童の肥満:学童期になると身長と体重の測定が毎年定期的に行われるようになりますので経時的な変化に注目し、3つのパターンに分けて考えるのが良いでしょう。
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■食事の注意:成長期ですので、通常は摂取カロリーの制限は行いませんが、一日の総摂取カロリーの目安は、1000+(年齢-1)×100で、熱量比は糖質50%、タンパク質20%、脂質30%で、この中でおやつからの摂取量は15〜20%とします。 また、基本方針は、
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■運動指導:苦手な運動を避けて、体全体の移動を伴う楽しい動きやゲーム性のある運動が適しています。また少なくとも15〜20分は持続できるような強度の運動を選ぶことも大切なポイントの一つです。さらに、近くに出かけるときにはできるだけ歩くなど日常的にこまめに体を動かす習慣を付けましょう。テレビ・ビデオの聴取時間を制限し、屋外遊びや運動を主体とします。父親の参加もお願いしたい所です。また年長児であれば家事の手伝いも結構な運動になりますのでおすすめです。 |
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