土川内科小児科ニュース 2月号 No.49 (もどる)
今月のテーマ:花粉症
今年は暖冬という予報が見事はずれ、雪の多さにはほとほとまいってしまいます。雪かきで腰を痛めたりしない様にご注意下さい。また、今シーズンはインフルエンザがまだ流行しておりませんが、油断大敵。くれぐれもご用心下さい。今年も早いものでもう2月、スギ花粉症の季節がやってきます。そこで、今月は平成10年3月号のリメイクになりますが、花粉症について取り上げました。 |
■花粉症のメカニズム:花粉症は花粉に対するアレルギー(ある特定の物質に対して過敏に反応すること)が原因で起こる疾患です。日本人の12%前後に見られるというスギ花粉症が有名ですが、ほかにひのきやイネ科の雑草(カモガヤなど)、キク科の雑草(ブタクサ・ヨモギなど)など約40種類が知られています。アレルゲン(アレルギーの原因)となる花粉に何年も接触していると、遺伝的に花粉症になりやすい素質を持った人では、花粉に対する抗体が作られるようになり、作られた抗体は肥満細胞と呼ばれる細胞の表面にくっつきます。そこに花粉がやってきて結合すると肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、このヒスタミンによって花粉症の症状(鼻水・くしゃみ・鼻づまり)が引き起こされます。花粉は目や鼻の粘膜から侵入しやすいため、目や鼻の症状が主な症状となります。 |
■スギ花粉症について:日本で初めてスギ花粉症が発見されたのは1963年です。その後、花粉症は急増し、1996年には1200万人、糖尿病(約600万人)の約2倍に見られると言われています。スギ花粉症がこのように増えた理由として、戦後の一時期に一斉に植林が行われ(現在人工林の50%強をスギとひのきが占めていると言われています)ましたが、安い輸入建材におされて伐採が行われなくなったため、スギが熟成して花粉を大量に生産し始めたことが上げられます。一斉に植林が行われたために各地のスギの樹齢差がなく、すべてのスギが一斉に花粉をとばすことも要因の一つのようです。 このほか大気汚染による気道粘膜の過敏性亢進や食生活の変化による異物に対する反応の過敏化、寄生虫感染の減少なども関与していると言われています。寄生虫の減少がどうして関係あるのか不思議に思われるかもしれませんが、寄生虫が体の中にいると、この寄生虫に対する抗体がたくさん作られ、この抗体が肥満細胞の表面を覆うため、花粉と反応する抗体が肥満細胞に結合できなくなり、花粉が侵入してきてもアレルギー反応が起こらないというわけです。 一般に吸入するアレルゲン粒子が10ミクロン以上のとき、100%鼻粘膜に吸着されます。スギ花粉の大きさは直径約30ミクロンですので、100%鼻粘膜に付着し、それより奥の気管や肺へは侵入できません。同じアレルギーで引き起こされる疾患でありながら、スギ花粉で喘息などの症状が出ないのはこのためです。また、スギの一枝あたりの花粉の量は約一億2500万個、また、飛散する距離は数十キロ〜数百キロと言われています。 その年のスギ花粉の飛散量は前年の夏の気温と日射量に左右されます。夏に暑い日が多く日射量が多い年は、翌年の雄花の数が多くなるからです。しかし、夏の天候が良くても、秋〜初冬に台風による強風や極端な秋の長雨、初冬の寒波があれば、雄花の生育が遅れ、花粉の飛散数が減少することもあります。なお、今年の飛散量は、昨年よりは少ないものの平年の約2倍前後と予測されています。 |
■花粉症の治療:花粉症の治療に使われるクスリには、大きく分けて3つのタイプのものがあります。 一つ目は抗アレルギー剤と呼ばれるもので、肥満細胞から遊離される化学伝達物質の遊離を抑制したり合成を阻害したりする薬剤です。このタイプの薬はその効果が十分に発揮されるのに2週間位かかりますので、症状が出る前から服用し始める事が大切です。 2つ目は、抗ヒスタミン剤と呼ばれるグループです。アレルギー反応の結果、肥満細胞より放出されたヒスタミンなどの作用をブロックする薬です。飲めばすぐに効きますので症状が出てから使うのが一般的です。抗ヒスタミン剤には共通して眠気・だるさなどの副作用が見られますが、最近はこのような副作用の少ない製剤が何種類も発売されています。 最後は、ステロイド剤です。ステロイド剤はいろいろな副作用をもっていますので、内服ではなく、局所に点鼻、点眼で使うのが安全で有効な使用法です。さらにこの他に、脱感作療法や手術、レーザー治療などがありますが、脱感作療法は現段階では効果が確実でなく時間もかかることから、あまり一般的ではありません。 |
■花粉症対策:薬剤による治療のほか、できるだけ花粉と接触しないような工夫が大切です。遺伝的な素因のない人でも、長年にわたり花粉との接触を繰り返していると発症することがありますので、現在症状がないからと言って安心せずに、普段から花粉との接触をできるだけ避けるように気をつけて下さい。
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■飛散量の多い警戒日とは
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今年も5月のゴールデンウイークまでがんばりましょう。 |
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