土川内科小児科ニュース 4月号 No.51 (もどる)
今月のテーマ:糖尿病(2)
今シーズンのインフルエンザは、3月下旬に小さなピークがみられただけで、無事シーズンを終了しそうです。5月の連休までは今度は花粉症のシーズンですが、こちらも今のところはあまり大量の飛散は見られていないようです。 今年度の院内報は、生活習慣病に重点を置いて行く予定ですが、今月は糖尿病を取り上げました。糖尿病については、平成11年の9月(第32号)に総論的に取り上げていますので、今回は糖尿病の治療について解説したいと思います。 |
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■糖尿病とは:糖尿病とは、インスリン(血液中のブドウ糖を筋肉、脂肪細胞、肝臓などに取り込むために必要なホルモン)が十分に分泌されなかったり、インスリンに対する反応が悪いなどのために血糖値が高い状態が続く疾患です。血糖値の高い状態が続くと全身の細小血管が障害されて網膜症、神経障害、腎症などの合併症が引き起こされます。糖尿病の怖さはこれらの合併症にありますが、その頻度は糖尿病にかかってからの期間が長いほど、また血糖のコントロールが悪いほど高くなりますので、糖尿病の治療は血糖のコントロールを良くして合併症の発生、進行を防ぐことを目的とします。
では、生活習慣の見直しという観点に特に注目して、糖尿病の治療について考えてみたいと思います。 |
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■食事療法:糖尿病の治療の中で最も基本となるのが食事療法です。適切な食事の量とバランスを守り、吸収されるブドウ糖の量を減らすことによって、インスリンの必要量が減り、膵臓への負担も軽くなり、インスリンの働きもよくなります。食事療法は基本的に一生続けるものでので、十分に理解して継続する事が大切です。薬物療法に頼って食事の注意をおろそかにすると薬の効果が打ち消されてうまくコントロールすることができなくなります。
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■運動療法:運動療法も食事療法同様、糖尿病の治療にとってはとても大切な事で、よく車の両輪にたとえられます。運動をすると血液中のブドウ糖が効率よく消費され、血糖値が低下します。さらに肥満が解消されるとインスリンに対する組織の感受性が高まり、インスリンの効きがよくなります。 糖尿病の時に有効な運動は糖質と脂肪の両方を消費する有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)です。運動をはじめると最初に糖質が使われ始め15分ぐらいすぎると脂肪が燃焼し始めますので、少し息が乱れ、ややきついと感じるくらいの強さの運動を20〜30分、できれば毎日、少なくとも週に2〜3回は行ってください。血糖値の上がる食後1〜2時間頃に行うのが効果的です。空腹時や食直後は避けてください。ちなみに80キロカロリーを消費する運動時間は、ウォーキングで20分、水泳で11分、サイクリングで15分位です。 |
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■薬物療法:食事療法や運動療法を適切に行ってもコントロールが不良の場合には、薬物療法を行いますが、薬物療法についてはまた別の機会にお話したいと思います。 | |
■治療目標:いずれの場合でも、血糖値のコントロール状況を1〜3ヶ月毎(間隔は重症度によって異なる)にチェックすることが必要です。コントロールの目標は、空腹時血糖が110以下、食後2時間の血糖値が180以下、ヘモグロビンA1cが6.5以下です。自己判断せずに、客観的なコントロール指標に基づいて、自分の生活習慣を見直し、日々精進することで、楽しい老後を送ることができるようにする事をお勧めしたいと思います。 | |
◆低血糖について 血液中の糖の濃度(血糖値)が70mg/dl以下になると、動悸がする、手がふるえる、眼がチカチカする、冷や汗をかくなどの症状があらわれ、そのまま放置して進行すると意識障害に陥る事があります。このような状態を低血糖と言います。低血糖を防ぐためには、低血糖の症状についてよく理解(症状には個人差がありますので、いつもと違う時には低血糖ではないかと考えてみることが大切)しておくことが必要です。そして低血糖の症状が起こった時には、砂糖やジュースのような甘いものやブドウ糖をすぐにとって血糖を上げるようにします。さらに主治医にそのことを報告して、原因を追求して、繰り返さない様に対策を講じなければなりません。 | |
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