土川内科小児科ニュース   6月号  No.53  もどる

  今月のテーマ:赤ちゃんの病気

 長期予報では、今年は梅雨らしい梅雨で、夏はまた暑い夏とか。明日の予報もはずれる事が少なくありませんので、今ひとつ信じていない人も結構多いような気もします。 今月は赤ちゃんに多く見られる病気をまとめて取り上げてみました。
脂漏性湿疹(頭):新生児期の赤ちゃんはお母さんからもらったホルモンの影響で頭や顔に脂(皮脂)がたくさん出てきます。毛の生えている所は皮脂腺も多く、皮脂の分泌が多い上に、髪がじゃまをして十分に皮脂を除去しにくいため、頭に黄色いかさぶたがこびりついてとれない事がよくあります。このかさぶたは皮脂が固まったもので、毎日お風呂に入れたときに、石鹸でよく洗い、清潔にしていれば、6ヶ月を過ぎる頃には自然と治っていきますが、ひどいときには白色ワセリンやオリーブ油などを塗って柔らかくした後、ガーゼなどでふき取ってあげます。かさぶたが厚い時やかさぶたのとれたあとが赤くなっているような時には、軟膏を処方しますので、受診して下さい。
脂漏性湿疹(顔):生後1〜2ヶ月の赤ちゃんの顔にブツブツができることがあります。よく見ると大人のニキビの様に見えます。ほとんどの場合、お顔を洗うのに石鹸を使っていないことが原因です。お顔は皮脂の分泌が豊富な上に、汚れやすい部分ですので、お湯だけでは充分に落としきれない脂がだんだんとたまっていき、生後1ヶ月くらいになると脂や汚れで汗の出口がつまり、ブツブツが出てくる様になります。石鹸を使って脂と汚れをきれいに落としてあげていると良くなっていきます。赤ちゃん用の石鹸は目に入ってもしみにくい様に作られていますから、安心して石鹸でお顔も洗ってあげて下さい。症状が重い時には一時的に塗り薬を使う事もあります。
突発性発疹:1歳くらいまでにほとんどの子どもがかかるポピュラーな病気で、3〜4日高熱が続いた後、体に発疹が出ます。
 原因:ヒトヘルペスウイルス-6が原因とされています。そのほか、エコー18・コクサッキーB5といったウイルスでも同じ症状がみられることがありますので、多くはありませんが、突発性発疹に2度かかったということもあります。感染経路はよくわかっていませんが、両親などみじかな人からの水平感染と考えられています。  
 症状:突然39度〜40度の高い熱が出ます。生まれて初めての発熱であることが多く3〜4日続きます。高熱のため、熱性けいれんをおこすことがあります。下痢がみられることがありますが、鼻水・咳などの症状は通常ありません。熱がさがると体の中心部に発疹がでます。発疹は、かゆみもなく通常3日くらいできれいになくなります。熱の割に食欲も機嫌もまあまあというのも特徴の一つです。
 診断:臨床経過から診断されます。熱がさがり、発疹が出た時点で診断が確定します。逆に、発疹が出るまでは診断がつきません。
 合併症:希に脳炎・肝炎を合併することが知られていますが、ほとんどないと考えていてもいいくらいです。
 治療:自然に治る病気ですが、高熱がでますので辛そうな時には解熱剤を上手に使ってあげましょう。初めての高熱でびっくりするかもしれませんが、あわてずに対処してください。食事は特にいつも通りでかまいませんが、熱が出ていますので水分を充分に与えてください。発疹が出てからの入浴ですが、発疹の出ている所を強くこすらず、さっとでしたらOKです。水分もあまりとらずに元気のないときは、お薬が残っていても再受診してください。
鵞口瘡:「がこうそう」と呼びます。頬の内側や舌などにミルクのかすのような白い斑点がつきます。ミルクと違い、拭いてもとれません。カンジダというカビの一種です。カンジダは普段から口の中や皮膚にいますが、抵抗力が落ちたり、抗生物質を使った後などに増殖して増えたものです。痛みなどはありません。軽症の場合は自然に良くなりますが、なかなかよくならない場合は、カンジダを退治する薬を使って治療します。
上皮真珠:生後3〜4ヶ月ぐらいまでの赤ちゃんの歯ぐきに、白く光った粒のようなものが見られることがあります。ちょうど歯が生えて来たように見えますが、まだ歯が生えるにはちょっと早い時期に見られるため、心配して受診する事がよくあります。歯ぐきの上皮が角質化したもので、小さな真珠の様に見えることから上皮真珠と呼ばれます。痛みもかゆみもなく、自然にとれてしまいます。とれた上皮真珠を赤ちゃんが飲み込んでしまっても特に問題ありませんので、そのまま様子をみましょう。
舌小体短縮症:舌小体とは、舌の裏側の真ん中についている舌と下あごをつないでいる筋状の組織です。生まれつきこの舌小体が極端に短いものを、舌小体短縮症と呼びます。舌小体が短いと母乳やミルクが飲みにくかったり、言葉を話す時に発音がうまくいかない事がありますが、ほとんどは成長と共に症状が軽くなり自然に治りますので、経過を観察することが一般的です。ごく希に、手術が必要な場合もあります。
乳児嘔吐下痢症:冬に多い病気で、ロタウイルスなどが原因でおこります。白いお米のとぎじるのような便が出ることから、仮性コレラなどと呼ばれたりします。  
 疫学:好発年齢は2歳以下で、気温が5度以下になるとみられるようになります。通常11月ころから3月にかけて流行します。糞便からの経口感染が主ですが、空気感染もします。潜伏期は2〜3日です。
 症状:その名のとおり、下痢・嘔吐が主症状です。下痢は平均1日数回で5〜7日持続します。30〜50%に白色便がみられますが、血便になることはまずありません。嘔吐は60〜90%にみられ、通常下痢より早くよくなります。発熱もしばしばみられますが、1〜2日と短期間です。
 診断:冬に白い下痢便がみられれば、診断は容易ですが、確実に診断するためには、便の検査が必要になります。
 合併症:脱水症です。
 治療:下痢止め、はきけ止めなどを処方しますが、お薬よりも家庭での食事療法が大切です。はきけが強いときはしばらく何も飲ませないで、はきけが落ちついてきたら、イオン飲料・番茶・湯冷まし・野菜スープなどをすこしずつ、何回にも分けて飲ませます。下痢がひどく、水分の摂取が思うようにできないときは、点滴が必要になることもあります。下痢については、すこしずつ消化の良い物を与えていきます。
臍ヘルニア:いわゆる「でべそ」と言われるものです。生後1ヶ月をすぎるころから目立ってきます。おへその周りの筋肉(腹直筋)がまだ弱いため、泣いたりして腹圧がかかった時に腹膜と一緒に腸が飛び出したものです。通常、放置しておいても、通常1歳頃までに自然に治ります。また、鼠径ヘルニアと違い嵌頓(「かんとん」と読み、とびだしたものがもとにもどらなくなること)する事はなく、危険はありません。
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