土川内科小児科ニュース   8月号  No.55  もどる

  今月のテーマ:夏

 今年の夏は猛暑が続きますが、いかがお過ごしですか。つい先頃、あまりの暑さで日射病で倒れた方のニュースが流れておりましたが、直射日光下または高温(多湿)の環境下における運動や作業により出現する生体の障害としては、日射病熱けいれん熱疲労熱射病の4つが知られており、これらをまとめて熱中症と呼びます。この中で日射病と熱けいれんが体温上昇を伴わない障害、熱疲労と熱射病が体温上昇による組織障害をきたすものです。
日射病:真夏の強い日差しに長時間さらされていると頭痛・めまい・吐き気、さらには意識障害などの症状が現れます。これが日射病です。人間の体は暑いと汗をかいて、水分とともに体から熱を発散させることにより体温を下げようとします。汗には水分のほかに塩分も含まれていますので、「大量の汗をかいて体内の水分や塩分が失われ、脱水に陥った状態」が日射病です。なお、日射病では通常体温は正常に保たれます。
熱けいれん:手足の筋肉や腹部の筋肉が痛みを伴って発作的にけいれんを起こすもので、大量の発汗による塩分喪失に対して、水分のみを補った場合に見られます。けいれん発作は、運動や作業が終了してからの入浴中や睡眠中に起きることもあります。
熱疲労・熱射病:車の中置き去りにされた子供が亡くなるといういたましい事件が時に報道されますが、これが熱射病です。、発汗による脱水に加え、熱産生の増加に放熱反応が追いつかず、うつ熱状態(熱がこもること)により体温調節機能が破綻し、高体温による組織障害が加わったものです。熱射病は、体温が上がりすぎてしまう事がその本態で、この点が日射病との大きな違いです。体温上昇が中程度にとどまるものを熱疲労と呼びますが、両者は程度の差があるだけで、基本的には同じものです。
予防対策
  1. 帽子をかぶる:日差しが強いときには、白色の帽子をかぶることで強い日差しが直接頭に当たることを防ぐなどの工夫をしましょう。
  2. 水分と塩分を十分に補給する:汗をかくような状況でのスポーツや作業時には、こまめに水分と塩分をとりましょう。塩分が不足気味になりますので、粗塩をなめたり、梅干しを食べたりするのもOKです。
  3. 適度な休息をとる:定期的に休息を取ることは非常に大切な事です。つい夢中になって事故につながることのないように気をつけて下さい。
  4. 無理をしない・させない:体調のすぐれないときや、途中から具合が悪くなったときには、無理をしないことが大切です。日射病や熱射病はだんだん具合が悪くなることがふつうですので、早い時点での対応に心がけましょう。
夏の感染症:夏に多い疾患として、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などがあげられます。昨年の夏は手足口病が大流行しましたが、今年は今の所、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱が多くみられている様です。
  • ヘルパンギーナは、コクサッキーA群・B群、エコーウイルス群など多くのエンテロウイルスが原因として知られています。好発年齢は1歳台で、90%が4歳以下です。通常、2〜5日の潜伏期のあとに、39〜40度の高熱で発症します。発熱後まもなく、のどの奥に水疱ができ、それが破れて潰瘍となり、痛みのために食事や水分をとることができず脱水症状が見られることもあります。一般的に予後は良好で、数日で解熱し7日以内に治癒します。基本的にはあまり心配のない疾患です。登校禁止には指定されておりませんが、幼稚園や学校は、熱が下がって口内の痛みがなくなるまではお休みするのが良いと思います。
  • 手足口病は名前の通り手・足・口・おしりなどに発疹(水疱)ができる病気で、コクサッキーA16やエンテロ71などのウイルス感染により発症し、数年おきに流行します。好発年齢は1〜4歳で潜伏期間は3〜5日です。伝染の様式は、気道分泌物・便の直接・間接接触と飛沫感染で、ウイルスの排泄は、咽頭から1〜2週間、便から3〜5週間と非常に長く続くため、隔離は不要とされています。発熱は見られないか、あっても38度前後で高熱が続く事はほとんどありません。のどが痛いためによだれが多くでたり、食べ物を受け付けなかったりする事がありますので、脱水にならないように、刺激の少ない口当たりの良い水分を中心に与える様な対応が必要となります。通常、軽症で自然に良くなりますが、ごくまれに髄膜炎を合併することがありますので注意が必要です。この疾患も登校禁止にはなりませんが、幼稚園や学校は熱があったり口内炎がある間はお休みするのが無難だと思います。なお、便から長期間にわたりウイルスが排泄されますが、きちんと管理されたプールでは塩素によりウイルスが死滅しますので、プールによる感染の心配はまずないと考えて良いと思います。
  • 咽頭結膜熱が今年は比較的多くみられています。この疾患はアデノウイルス3型、7型などが原因です。感染経路として、眼への直接感染、飛沫感染、便から口への感染などが知られています。汚染されたプールの水を介して流行する事があるため、プール熱の別名がつけられました。夏から秋にかけて、主として学童を中心に流行します。39〜40℃の高熱が4〜7日続き、喉の赤みと痛み、目の充血が特徴です。頭痛、吐き気、腹痛、下痢を伴うこともあります。治療は対症療法が主体となります。プールの遊離塩素が0.35ppmあれば感染は予防できますが、水泳後の洗眼、うがいも大切です。
このほか、夏に多い疾患として、とびひ(伝染性膿痂疹)、日光皮膚炎(日焼け)、汗疹(あせも)、虫さされ、夏ばて、などがあげられます。これらについてはまた別の機会に取り上げてみたいと思いますが、これまでの院内報でも何度か取り上げておりますので、是非、参考にしてください。
今年の夏は特に暑い様ですので体調を崩さないように気をつけて元気に夏を乗り切りましょう!
熱中症の種類
  • 日射病:大量の汗をかくことにより体内の水分と塩分が減少して脱水状態に陥ったもの。
  • 熱けいれん:大量の発汗により塩分が失われた時に水分のみを補給する事により引き起こされるけいれん発作。
  • 熱疲労・熱射病:発汗による脱水に加え、体内の熱を十分に発散できずにうつ熱状態となり、高体温による組織障害が加わったもの。
日射病の応急手当のポイント
  1. 涼しいところで休ませる。
  2. 水分と塩分を同時に補給する。
    • 水500mlに塩小さじ1杯の割合
    • 10℃位の冷たい水が良い
    • スポーツ飲料でもOK(塩を少し追加する)
  3. 嘔吐・意識障害・体温上昇が見られるときは救急車を呼ぶ
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