土川内科小児科ニュース  2月号  No.61   もどる

  今月のテーマ:煙草の害

 早いもので今年も一ヶ月が過ぎましたが、新年の決意として今年こそは「煙草をやめるぞ」と心に誓った方はいらっしゃいませんでしょうか。今月は煙草の害について取り上げて見ました。
 タバコの煙には、タバコを吸って口腔内に達する「主流煙」と、それを吐き出した「呼出煙」、さらに火のついた所から立ち上る「副流煙」の3種類があります。煙の中には4000種類の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質です。主な物質とその量は右表の通りです。注目したいのは、主流煙よりも副流煙の方が有害物質を多く含んでいるという点です。
 次に非喫煙者を1とした時と比べて、喫煙者がどのような疾患で何倍死亡しやすいかについてのデーターを見てみると、喉頭癌が最も多く32.5倍肺ガンがその次で4.5倍、そのほか肝臓癌 3.1倍、口腔・咽頭癌 3.0倍、食道癌 2.2倍、肺気腫 2.2倍、胃潰瘍 1.9倍、クモ膜下出血 1.8倍、虚血性心疾患 1.7倍、膀胱癌、膵臓癌、子宮癌が1.6倍、胃ガン 1.4倍となっております。
 さらに、たばこの煙は周りの人にも大きな影響をもたらし、家族に喫煙者がいると3歳までの幼児の喘息様気管支炎の確率が多くなります。誰もいないときには、100人中1.7人なのに対して、家族の誰かがたばこを吸うと3人に増え、母親が吸う場合には、なんと4.9人と約3倍にもなってしまいます。また、夫が1日に20本以上のたばこを吸うと、妻が肺癌で死亡する確率がなんと約2倍となります。
 喫煙者の肺がどのような状態になっているか見てみましょう。下の図に示しました様に、肺表面の変化としては、たばこを吸うほどススやタールが沈着し黒くなっていきます。肺割面の変化はもっと深刻で、ガス交換を行っている肺の組織は破壊され、正常な細胞がどんどん失われていきます。そのため正常なガス交換が行えなくなります。
 次に、一日の喫煙本数と持続性の咳・痰などの慢性気管支炎様症状の関係を調べてみると、一日の喫煙本数が多いほど年齢の増加に伴って症状を持っている割合が高くなります。また、消化性潰瘍治癒後の再発率を調べたデーターでは、喫煙ありの方が潰瘍の再発率が有意に高くなっており、喫煙の影響が呼吸器系以外にも現れることがわかっています。   
 さらに、1日の喫煙本数と病気との関係を見てみると、1日に20本たばこを吸う方は吸わない人に比べて肺癌で亡くなる可能性が約5倍、50本吸う方の場合にはなんと15倍も高くなります(下図参照)。また、狭心症や心筋梗塞で亡くなる可能性は、20本吸う方で約2倍、50本では約3倍となります。
 この様にたばこの健康に与える影響は大変なものがありますが、禁煙をしてたばこを吸わなくなると、その日から肺癌や虚血性心疾患(心筋梗塞)で死亡する危険率が徐々に低下していきます。例えば、毎日喫煙している人の肺癌で死亡する危険率は、4.5倍ですが禁煙して4年位すると2倍、10年以上経過すると1.4倍に低下します。
 いずれにしても煙草に関しては体にとって良いことは何一つありません。自分の体に与える影響のほかに回りの人にも迷惑をかけるだけですので、煙草でストレスを発散したり気分転換をしたりとそのメリットを強調される方もいらっしゃいますが、何か他の方法でその目的を達成すべきではないでしょうか。
 最近ではニコチンの貼付剤やニコチンガムなどの禁煙補助手段もそろっており、禁煙がしやすくなりました。禁煙権が広く主張されるようになり肩身の狭い思いをされている愛煙家の皆さん、この際思い切って煙草を止めてみませんか。
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