健康最前線(No.78) |
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今回のテーマ:熱性けいれん |
高い熱を出したときにけいれんを起こし意識を失う熱性けいれんについては、比較的良く知られていると思いますが、はじめてひきつけを経験したおかあさんはびっくりしてあわててしまう事と思います。熱性けいれんの頻度はそれほど多いものではありませんが、突然出会っても冷静に対処できるようにするためには、熱性けいれんについてあらかじめ良く知っておくことが大切です。
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■けいれん(ひきつけ)とは: 一時的に呼吸が止まり、白目をむいて体をこわばらせ、意識を失う状態です。原因としては熱性けいれん(一番多い)のほかに、てんかん、髄膜炎・脳炎、頭部外傷、水や電解質の不均衡、代謝異常などがあげられます。 |
■熱性けいれんの本態や発症機序:てんかんとの関連については解明されていませんが、脳の発達が未熟なため、熱が出たなどのちょっとしたことが脳細胞を刺激してけいれんを起こすものと考えられています。生後6カ月から5歳までにみられ、頻度は5歳以下の小児人口の7〜8%。39度前後の発熱で、中枢神経系の感染によらないものを言います。主な特徴は、
- 通常急激な熱上昇に伴う
- けいれんは10分以内
- 発熱後12時間以上たってからみられることはほとんどない
- ふつう1回の体温上昇に1回だけ
などです。再発率は30〜50%で、約1/3は2回以上繰り返すと言われています。
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■けいれんが起きた時にどうするか:
- あわてない:まず大切なのは、あわてないことです。、けいれんは通常、数分以内で止まり、命にかかわることや後遺症を残すことははまずありませんので、冷静に対処して下さい。
- 体を横にする以外は何もしない:舌をかむことはまずありませんから、口の中に指や箸・タオルなどを入れたりしないで下さい。かえって危険です。また、大声で名前を呼んだり、体を揺すったりするのもよくありません。刺激を与えることでけいれんが遷延したり誘発される場合があります。吐くと誤嚥(嘔吐物を間違って気道の方へ吸い込んでしまうこと)の危険がありますので、体を横にねかせ、衣服をゆるめて、楽な姿勢にしてあげましょう。
- じっと見る:あとで、けいれんの様子をきちんと説明できるように、よく観察して下さい。時計をみて何分続いているかを確認する事も大切です。主観的には非常に長く感じるものですが、冷静に時間を計ってみるとそれほど長くない事がわかります。観察のポイントは、顔色・目の動き・手足のつっぱり方・左右差・ひきつけていた時間などです。
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■急いで病院へ行った方が良い場合
- けいれんが5分以内に収まらない時:90%以上は5分以内におさまり、5分以内のけいれんであれば年に4〜5回生じても脳障害の危険性は考慮しなくても良いと考えられていますが、20分以上持続するけいれんでは1回のけいれんでも後遺症の心配が出てきます。
- 意識障害が持続する場合:けいれんがおさまるとちょっとトロンとしたり、疲れたように眠ってしまいますが、意識障害が持続することはありません。けいれんの前または後に意識障害が認められる場合には、脳炎や急性脳症の可能性があります。
- けいれんが繰り返し起きる場合:1回のけいれん発作が5分以内の短いものでも、24時間以内に2〜3回以上繰り返す場合には、その後何度も繰り返す複雑型熱性けいれんの可能性が否定できません。
- 半身または体の一部のけいれんの場合:通常は両方の手足をピーンと突っ張った後、両手両足をガクガクとふるわせます。つまり左右対称性の動きを示します。左右差があったり、体の一部だけにけいれんが起こるのは、熱性けいれん以外の原因で起こっている可能性を考えなければいけません。
- けいれんに先行する神経学的異常(脳性麻痺・精神遅滞・小頭症など)や発達障害の見られる場合
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■けいれんがおさまったあとにすること
- 何度くらいの熱があったかを確認する事は、診断や今後のためにも大切なことです。必ず体温計を使って、きちんとはかって下さい。「何度かわかりませんが、かなり熱かったです」や「途中までははかったんですが」では役に立ちません。発熱の有無・程度は熱性けいれんの診断には不可欠で、熱性けいれんだったかどうかは、予防接種のスケジュールなど今後の対策にも大きな影響をもちます。
- ひきつけをおこしたら、その原因を明らかにする事が大切です。単純性の熱性けいれんの場合には、救急車を呼ぶ必要はありませんが、その日のうちに医療機関を受診しましょう。深夜でしたら(症状にもよりますが)、おちついている場合は翌朝でかまいません。
- 症状がおちついている場合は、熱さましの座薬などは使わないで医療機関を受診してください。熱さましを使ってもおきてしまった熱性けいれんの治療にはなりません。
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■熱性けいれんの治療:単純性熱性けいれん(下記参照)の場合には、無治療で経過を見ますが、危険因子(下記参照)を有するものでは、抗けいれん剤(ダイアップ座剤など)の投与が推奨されています(1988年熱性痙攣懇話会)。なお、将来てんかんを発症する危険因子を多く有する場合には抗けいれん薬の持続投与(フェノバルビタールなど)が行われる事がありますが、一定期間抗けいれん薬を持続投与して、熱性けいれんの再発を予防すれば、てんかんの発症を防げるか否かは現時点では未定であり、今後の検討を待たねばなりません。 |
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単純型熱性けいれん
- てんかんの家族歴(−)
- 脳障害の原因となりうる疾患の既往がない
- 発病年齢:生後6ヶ月〜満6歳未満
- 発作の持続時間:最高20分以下
- けいれん:左右対称性、巣症状(−)
- 発作後:持続性意識障害(−)、片麻痺(−)
- 明らかな神経症状、知能・性格障害を有しない
- 発作が短時間に頻発することはない
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危険因子
- けいれん発症前の明らかな神経学的異常や発達遅延
- けいれんの持続が15〜20分以上
- 焦点けいれんまたは部分優位けいれん
- 両親・同胞にてんかんまたは無熱性けいれんあり
- 初発年齢が1歳未満または6歳以後
- けいれんを24時間以内に2〜3回繰り返す
- けいれん直前・直後の体温が37.5度未満
- 単純型であっても年に4〜5回以上繰り返す
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■予防接種はどうしたらよいでしょう:初回発作が生後6ヶ月以降の単純性熱性けいれんの場合は、基本的には現行の予防接種はすべて行ってかまわないと考えられていますが、複雑型の場合には、小児神経を専門とする小児科医と相談する必要があります。なお、初めての熱性けいれんの場合には、2〜3ヶ月の観察期間をおいてから、それ以外でも発熱の原因となる疾患があったわけですから、1ヶ月前後は様子を見てから予防接種を受ける方が無難と考えますが、はっきりとした取り決めはありませんので、ケースバイケースで、対象となる予防接種の種類により急いで受けなければならない時とそうでない時とでは自ずと対応が変わってきますので、ご相談下さい。 |
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