土川内科小児科ニュース  9月号  No.8 もどる

  今月のテーマ:住民検診

 今年の夏は冷夏という予想にしては、暑かったような気もしますが、皆さんいかがでした。お盆のお休みを利用して、スタッフと一緒に慰安旅行に行って来ました。お盆に病気になってしまった患者さんにはご迷惑をかけてしまいましたが、開業して5年、初めてのまとまったお休みということで、リフレッシュできました。当分は休みませんのでご安心?を。 ところで、皆さんは市の住民健診を受けておられますか。「自分はどこも悪くないから」、「何か異常が見つかると怖いから」などの理由で受けない方も少なくないかと思いますが、毎年行われるものであることから、是非受けることをおすすめします。自覚症状のない高血圧や糖尿病がみつかることがあります。これらの疾患は自覚症状がなくても、合併症は進行しますので、健診などの機会に見つかれば不幸中の幸いなのです。また、胸部写真で怪しい影が見つかったとき、毎年健診を受けていれば過去の写真と比べることでその影が心配ないものか、詳しい検査が必要なものかの区別が容易にできます。過去の写真は我々一般の医療機関でも取り寄せることができるので、これはとても有意義なことなのです。せっかくのチャンスですし、権利でもあるわけですから、是非毎年受けて下さい。今年の健診を受けた方は、そろそろ結果がくるころですので、今月は健診結果の見方を特集しました。

「血圧」一般的に年齢とともに血圧は高くなります。一回の測定で即異常とはいえませんが、収縮期圧で160、拡張期圧で90を常時越えている場合には治療が必要ですので、今回高かった場合は医療機関で再検査を受けて下さい。高いのを放置しておくと臓器障害が進行します。これが怖いのです。

「尿検査」蛋白・糖・潜血の3項目を調べます。糖が(+)の場合、糖尿病の疑いがあります。蛋白・潜血が陽性の場合、多くは「無症候性血尿および蛋白尿」といって特に治療のいらないものですが、確認が必要です。腎臓癌・膀胱癌などが潜血(+)をきっかけに見つかることがあるからです。いずれにしても3項目のいずれかに(+)以上の異常がみられたら医療機関を受診して下さい。

「脂質検査」健診では、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の3つが通常調べられます。このうち中性脂肪は食事の影響を相当受けますので高値の場合、12時間以上空腹の状態で測定したのでなければその測定値はほとんど意味を持たなくなってしまいます。12時間以上空腹の状態で測りなおしが必要です。さて、この3つの値がでていたら、上の計算式で、LDLコレステロールを求めて下さい。。もしLDLコレステロール値が150を越えていたら要治療です。但し中性脂肪が400を越えた場合はこの式はつかえません。

「肝機能」通常健診ではGOTとGPT、それにγGTPが調べられます。これまでに肝炎にかかったことがない人でこれらの数字に異常値が出た場合、一番考えられるのは脂肪肝です。これは、肝臓に脂肪がたまりそのために肝臓の細胞がパンクしてしまう病気です。通常はGPTの方がGOTよりも高くなっているはずです。アルコールが関係している時にはγGTPが高値になります。いずれにしても一度肝臓の超音波検査を受けることをおすすめします。脂肪肝もほおっておけば肝硬変になる可能性がありますので、症状がないからといって甘くみてはいけません。

「糖尿病」血糖の値が空腹時で120、食後などの随時血糖で200を越えていたら糖尿病の可能性があります。また、尿検査で糖が(+)も異常です。糖尿病も早いうちは自覚症状がありませんから、これらの異常値がみられたら精密検査が必要です。

「腎機能検査」クレアチニンが通常測定されますがこの値は滅多に異常値を示しませんので異常値の場合精密検査が必要です。

「貧血検査」この検査では、血色素量に注目して下さい。この値が12以上あれば問題ありません。健診では、正常値がきめられており、その範囲をはずれた場合は異常とされてしまいますが、この正常値をはずれたものすべてが異常と言うわけではありません。12以下の場合は血球容積を赤血球数で割り、10をかけてMCVを求めてみて下さい。。このMCVが80より少ない場合は、鉄欠乏性貧血が疑われます。体には約1年分の鉄が蓄えとして備わっていますが、貧血になった場合はこの蓄えがなくなっているわけですので、鉄を補給する必要があります。一旦貧血になってしまうと食事からとれる鉄の量では全然たりませんので、鉄剤を内服する必要があります。MCVが80より多い場合(その頻度はあまり高くありませんが)、その貧血の診断には血液学の専門的知識が必要になりますので、当院(一応小生日本血液学会認定の指導医なんですよ)か血液の専門医のいる病院を受診して下さい。

 以上、簡単に健診結果の見方について解説してみました。紙面の都合もあり、わかりにくい点があるかと思いますので、もどってきた健診結果で疑問がある時は、結果をお持ちになり、お気軽におたづね下さい。せっかくの機会ですから有効に活用してください。トップへ