土川内科小児科ニュース 12月号 No.11 (もどる)今月のテーマ:インフルエンザ
皆さんにとって、どのような年だったでしょうか。重い病気にもならずに健康で過ごせた方が多いと思いますが、油断大敵。冬といえば、風邪の親玉とも言えるインフルエンザシーズンです。昨シーズンは老人ホームで死亡するケースが相次いで報道されましたが、インフルエンザは幼児や基礎疾患を持った人にも非常に怖い感染症で、毎年数万人が罹患し、2000人近くの人が亡くなっております。そこで、今月はインフルエンザを特集してみました。
●インフルエンザとは:インフルエンザにはA型、B型、C型の3つのタイプがあります。A香港型、Aソ連型などが有名です。その年により流行する型が変わります。またやっかいな事に同じ型でも毎年微妙に形を変化させますので、以前にインフルエンザにかかってできた免疫も役に立ちません。毎年かかる可能性があるのです。
●インフルエンザの疫学:インフルエンザは人から人に直接の接触と空気感染によりうつっていきます。潜伏期間(うつってから病気になるまでの期間)は1〜3日です。潜伏期が短いのは、口や鼻から侵入したウイルスは体の深部に入らず、鼻や喉の粘膜で増殖しただけで症状が出現するからです。
●インフルエンザの症状:悪寒(さむけ)を伴った高熱が3日から5日続きます。筋肉や関節の痛みのほか、頭痛や喉の痛みも見られます。鼻水や咳・痰もひどく、さらに全身のだるさや食欲不振、腹痛・下痢・吐き気が見られることもあります。
●インフルエンザの合併症:気管支炎、肺炎、中耳炎、筋炎、関節炎、心筋炎、脳炎、髄膜炎などが知られています。特に肺炎は幼児や高齢者でインフルエンザによる死亡の大きな原因になっています。成人でも心筋炎を起こして死亡する事があり、インフルエンザで怖いのはこれらの合併症です。
●インフルエンザの治療:インフルエンザの特効薬はまだありませんので、対症療法と言って症状を和らげる治療と、二次感染を予防する治療が中心となります。
●インフルエンザの予防法:消極的な予防法になりますが、無理をしないでよく寝て休養を十分とり、暴飲・暴食をさけて、自分の体の免疫力を高めておくことです。外出後や食事の前によく手を洗う、うがいをする、必要がないなら人混みをさけるなども大切です。積極的な予防法は予防注射以外に方法は現在のところありません。予防接種をしていればインフルエンザに絶対かからないということではありませんが、かかっても症状を軽くしたり重篤な合併症を防ぐことができます。予防注射についてはコラムのインフルエンザワクチンをご覧下さい。
●家庭で気をつけること(1)熱さましで、アスピリン(バッフアリンなど)の入ったものはインフルエンザの時には使ってはいけません。ライ症候群を起こす可能性が指摘されているからです。医療機関からはインフルエンザを疑ったら、アスピリンが処方されることはまずありませんが、家庭の常備薬にはアスピリンが入った解熱剤が入っていることがよくありますので、注意してください。
(2)家庭での看護のポイントは安静、保温、水分補給です。熱があっても元気だったらむりやり布団に寝かせる必要はありませんが、適度の暖房をとり、できれば加湿器で適度の湿度を与えた部屋でのんびり過ごしましょう(インフルエンザウイルスの活動度は湿度が高くなると極端に弱まります)。食欲はなくて当たり前くらいに考えて子供の好きなもので消化のよいものを与えます。水分は十分とるように心がけて下さい。
(3)入浴は絶対ダメという考え方は少々頑固すぎます。熱も下がって気分もよい時は湯冷めさせないように注意して、疲れさせないようにさっと入るのは、さっぱりしてぐっすり眠れるようになりますし、適度の湿気は喉に湿り気を与え、痰をさらさらにする効果が期待できますので、むしろ好ましい事と考えます。
インフルエンザが流行らない事が一番いいのですが、インフルエンザ予防対策の第一歩は、敵をよく知ることです。この機会に一度インフルエンザについて勉強してみて下さい。
ちょょっと早いですが皆さんよいお年を!
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●インフルエンザワクチン(コラム)
インフルエンザワクチンについて:インフルエンザワクチンについてはいろいろな考え方があり、日本では1994年から定期の予防接種からはずされたため(欧米では老人や慢性疾患を持つ患者さんなどを中心に広く接種が行われており、日本でも数年以内に危惧されている大流行に備えてワクチンの供給体制は整えられつつありますが)、極端に接種率は低下してしまいました。インフルエンザは、毎年その年の冬に流行すると思われる型を予測し、それに基づいてワクチンを作っておりますが、予測がはずれるとあまり効果があがらないのと、ウイルスが微妙にその形を変えること、さらには、ワクチンの接種で血中に抗体はできるものの、ウイルスが侵入する鼻腔内粘膜や上気道における抗体の量は多くならないなどのため、十分な効果が発揮できないのではと言われております。しかし、ここ数年予測の精度がどんどんあがってきており、型が少しずれても全く効果が出ないわけではありませんし、発症は防げなくても重症化は防ぐことができ、その効果は70%ぐらいと言われています。またワクチンの質もどんどん良くなってきており、他のワクチンと比べて副作用が特に多いというような事はありませんので、他に積極的な治療法がない現状では受けておくことをおすすめする立場を私はとっております。
どのような人がワクチンを受けた方が良いのでしょうか:65歳以上の人、基礎疾患(心疾患・肺疾患・腎疾患など)を有する人、老人ホームに入所している人、気管支喘息や喘息性気管支炎の子、医療機関や老人ホームのスタッフ、受験生とその家族、教師など。
インフルエンザワクチンの副作用:注射部位の腫れと痛み、発熱が時に見られます。まれに急性散在性脳脊髄炎(過去9例の報告があります)。
ワクチンを受ける際の注意:重症の卵アレルギーの人、ゼラチンアレルギーの人、以前にインフルエンザワクチンによるアレルギー反応その他の問題のあった人、妊娠中の人は受けられませんので、ご注意下さい。
ワクチン接種の時期:1〜4週の間隔(できれば4週あけるのが望ましい)で2回接種します。免疫ができるまでに少々時間がかかりますので、本格的に流行する前(遅くても12月末まで)に受けておきたいものです。。
ワクチンの接種料:一定の決まりや取り決めはありません。自由診療になりますので、各医療機関により異なります。当院では1回3000円としております。通常もう少し高いのが一般的ですが、2回接種しなければならないこと、家族で受けるケースが多いことなどを考慮し、今回価格を設定しなおしました。
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