土川内科小児科ニュース  4月号  No.15 
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  今月のテーマ:生活習慣病

はじめに:三大成人病と言われるがん、脳血管障害、心疾患は死亡原因の第1位から第3位を占め、平成7年には、50万人以上、全死亡の6割以上がこれらの疾病により死亡しています。これらは成人に多い病気として、昭和30年頃から成人病と呼ばれ、主にその早期発見・早期治療に重点がおかれ、対策が講じられそれなりの成果をあげてきました。しかし、その後の調査・研究で、成人病には、発症や進行に食生活・運動習慣・喫煙・飲酒などの生活習慣が深く関与していることが明らかになり、生活習慣を見直すことで病気の発症や進行を予防すべきであるという観点から、厚生省は、平成8年12月、40年以上使い慣れてきた「成人病」に代わって、新名称「生活習慣病」を使うことを決定しました。この変更で注目してほしいのは、これまでの成人病対策の中心が疾病の早期発見を目的とした二次予防対策であったのに対して、1段階前の病気になることを防ぐという一次予防対策へと歩をすすめたことです。生活習慣は、小児期にその基本が身につけられると言われていますので、小児期から生涯を通じた疾病予防対策が必要であることを印象づける 事ができる点など歓迎すべき変更だと言えます。そこで今回は生活習慣病について考えてみたいと思います。

生活習慣病とは:生活習慣病とは食生活・運動習慣・休養・喫煙・飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群で、表1にあげた様な疾患が該当します。


表1 生活習慣と生活習慣病との関係
食習慣 糖尿病・肥満・高脂血症・高尿酸血症・循環器病・大腸がん・歯周病など
運動習慣 糖尿病・肥満・高脂血症・高血圧症など
喫煙 肺がん・循環器病・慢性気管支炎・肺気腫・歯周病など
飲酒 アルコール性肝疾患など


生活習慣病の発生要因:生活習慣病の発症には、生活習慣の他にも、遺伝子の異常や加齢を含めた「遺伝的な要因」や病原体、有害物質による環境汚染、事故などの「外部環境要因」など様々な要因が複雑に関連しています。これらの要因のうち、遺伝的な要因と外部環境要因は個人では何ともしようがありませんが、生活習慣要因は個人での対応が可能です。また、生活習慣病に該当する疾患には、自覚症状がはっきり現れた時には、病気はすでにかなり進行しているものが多く、一度病気になると、完全に治癒する事は難しく、生涯にわたる治療が必要となります。診断された時点で生活習慣を改めることで進行を遅らせたり合併症の出現を未然に防いだりする事はある程度可能ですが、間に合わない事もあります。そうなる前に生活習慣を変え、病気にならない様にすることが大切です。

対策:では、具体的にはどうすれば良いのでしょうか。ブルスローの7つの健康習慣や国立がんセンターのがんにならない12条などが、良い生活習慣としてあげられています。これらの良い生活習慣は短期間実行できても何にもなりません。継続的に続けることが大切です。あなたはどれだけの項目をクリアーしているでしょうか。また、どれだけ変えることができますか?

まとめ:昔に比べて生活が便利になり、すぐ近くのマンションから、車に乗ってコンビニへ出かけた小太りの人が、たばこをふかしながら店内へ入り、缶ビール・スナック菓子を購入するというような光景は日本中のどこでも、何時でも見られるようになりました。自動販売機はどこにでもおいてあります。一方、都会ばかりではなく、田舎でも運動場の確保も易しい問題ではなくなってきております。職場や家庭でたばこを吸うのをやめてほしいと言うのも勇気がいります。私達の社会自体が、生活習慣病の発生を助長する方向へと動いています。バランスある栄養・規則正しい運動・適度な休養が生活習慣病(成人病)予防の3本柱ですが、生活が便利になればなるほどまわりは誘惑だらけで、この3本柱を実行するのが難しくなります。人間は誘惑に弱いいきものです。また、いやなことを毎日続ける人はいません。それがその人にとって心地よいから習慣になるわけです。何か強いきっかけがなければ、この心地よい習慣をかえる事は簡単な事ではありません。ですから、多くの人がこの生活習慣病が原因で亡くなっているわけです。病気になってから、それを きっかけに仕方なく、生活習慣を改めるというのが普通のパターンですが、それが間に合うのは運が良い人です。取り返しのつかない病気になる前に、強い意志を持って、社会の誘惑に負けずに、生活習慣を改めてはみませんか?

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ブルスローの7つの健康習慣:米国のブルスローとエンストルムは1965年から30歳以上の男女約7000人について健康習慣を調査して、死亡率との関係を検討しました。その結果、以下に示す7項目中6項目以上を守っている人は、45歳時の平均余命が33歳であるのに対し、3項目しか守っていない人では、平均余命が21歳と12歳も短いことが明らかとなりました。それ以来この7つの健康習慣がよく取り上げられています。 本文へもどる

ブルスローの7つの健康習慣 C規則的な睡眠を7〜8時間とる
@喫煙しない D適正な体重を維持する
A毎日適度の運動をする E朝食をきちんと食べる
B深酒をしない、または酒を飲まない F間食をしない

 
 
 がんにならない12条(国立ガンセンター) 本文へもどる

1.色とりどりの豊かな食事に心がけ、バランスのとれた栄養を取ります。
2.毎日、変化のある食生活をします。食べ物がワンパターンではいけません。
3.食べ過ぎは避けて、脂肪分を控え目にしましょう。
4.お酒はほどほどに飲みましょう。健康的に楽しく飲むのが大切です。
5.タバコはできたらやめましょう。どうしても吸いたい人は、本数を減らします。
6.緑黄色野菜をたくさん食べましょう。ビタミンと繊維質の食物を多くとれるからです。
7.塩辛いものや熱いものは避けましょう。胃や食道をいたわることが大事です。
8.焦げた部分は食べないようにしましょう。遺伝子が突然変異を引き起こすからです。
9.カビの生えたものは食べないようにしましょう。発ガン物質があるかもしれません。
10.日光に当たり過ぎないようにしましょう太陽はいたずら者です。
11.適度にスポーツをしましょう。いい汗を流して健康保持につとめましょう。
12.体をいつも清潔にしましょう。気分もさわやかです。
 

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