土川内科小児科ニュース  11月号  No.22 
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  今月のテーマ:介護保険法

急速な高齢化の進展に伴い、寝たきりや痴呆の高齢者が急速に増えつつあります。一方、核家族化・少子化を中心とした家族構成の変化が高齢者の介護問題を一層深刻なものとしつつあります。こうした状況の中で、要介護者の介護を社会全体で支える必要性から、昨年十二月に介護保険法・介護保険施行法などが交付され、平成十二年四月から施行される介護保険の骨格が明らかになりました。私たちの生活に直接影響のある問題なのに、わかりにくいためか、社会的な関心度がは低いようですので、今月はこの問題について取り上げて見ます。
介護保険制度は、現在ある四つの社会保険制度(医療保険・年金保険・労災保険・雇用保険)に次ぐ五番目の社会保険制度として創設されました。ごく簡単に制度の概要をわかりやすく説明してみます。
  • 「いつから?」介護保険法の実施は、2000年4月1日からです。現在本番に向けて具体的な試行が行われています。
  • 「運営するのは?」保険者(サービスやそれにかかる費用を負担する事業主体)は市町村です。
  • 「サービスを受けられるのは?」被保険者(この保険でサービスを受けられる人)は、第1号被保険者(65歳以上の人)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)です。
  • 「費用は?」保険料は市町村が定めて徴収します。保険料の決定は1999年度末でまだきめられていません。65歳以上の方は年金から天引き、65歳未満の方は、医療保険料に上乗せされて徴収されます。また、利用者はかかった費用の1割を負担しなければいけません。
  • 「どんなサービスがあるの?」在宅サービスと施設サービスに分けられます→表1参照
表1 介護サービスの内容
在宅サービス ホームヘルプサービス・デイサービス・ショートステイ・訪問入浴・訪問看護・リハビリ(訪問・通所)・医師等による医学的管理・グループホーム・有料老人ホームやケアハウスにおける介護・福祉用具の購入や貸与・住宅改修(手すりなどの取り付け)・ケアマネージメントサービス(ケアプランの作成)
施設サービス 特別養護老人ホーム・老人保健施設・療養型病床群(療養型病床群・老人性痴呆疾患療養病棟・介護力強化病院)
具体的な流れを表2に大体の流れを示しました。この保険を使うことができるのは、第1号被保険者のうち、要介護(寝たきり・痴呆)・要支援(虚弱)の認定を受けた人と第2号被保険者のうち初老期痴呆などで要介護などになった人で、利用するためには、市町村に申し出て、要介護認定を受けなければいけません。要介護度の審査判定は介護認定審査会の結果および医師の意見書をもとに合議により決定されます。介護を希望してもこの介護認定審査会で認められなければ受けられません。要介護と認定された時には、ケアプランという計画書を作ってもらい、それに基づいてサービスを利用することになります。ただし、要介護度(5段階)に応じて支給限度額が定められております。介護認定で認められたサービス日数を越えた追加サービスは全額自己負担となります。
表2 介護サービスの具体的な流れ
1)市町村への申し込み(介護を希望する人が市町村へ申し込みをします。
2)市町村職員が家庭訪問をして実態を調査します(73項目に及ぶ調査です)。
3)コンピューターによる一次判定(73項目の内容をコンピューターに入力し判定します)。
4)かかりつけ医に意見書を書いてもらい提出します。
5)介護認定審査会(市で選任した5名前後の審査会)のメンバーにより介護度を決定、結果を通知します。
6)保険給付額とサービスメニューをもとに介護計画(ケアープラン)を作成します。
7)介護サービスの実施
8)要介護更新認定の申請:3〜6ヶ月毎に要介護度を見直します。
要介護認定の目安、給付費用、ケアープランの内容の一例を下の表に示します。ちょっとややっこしいですが、近くに介護保険の対象となるような高齢者がいるご家庭では、当てはめてみて下さい。
区分 要支援 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
主な状態 概ね自立しているが生活管理能力が低下などのため時々介護を要する 概ね自立しているが一部介助・支援を要す。 食事・着脱は何とかできるが、排泄は一部介助を要す。 食事・排泄・着脱のいずれも一部介助を要す。 重度の痴呆状態を呈し、食事・排泄・着脱いずれも全面的な介助を要す。 寝返りできない状態で、全面的介助を要し、一日中ベット上で過ごす。
寝返り できる できる できる できる できる できない
排泄 概ねできる なんとか 一部介助 一部介助 要介助 要介助
着脱 概ねできる なんとか なんとか 一部介助 要介助 要介助
摂食 概ねできる なんとか なんとか なんとか 要介助 要介助
入浴 概ねできる 一部介助 一部介助 一部介助 要介助 要介助
調理 時々支援 一部介助 一部支援 困難 困難 困難
掃除 時々支援 一部介助 一部支援 困難 困難 困難
給付費用 6万円前後 14〜16万 17〜18万 21〜27万 23万程度 29万程度
ケアープラン ホームヘルプ(週1〜2回)、デイサービス(週1〜2回)、訪問看護(週1回)、ショートステイ(年に1〜2回) ホームヘルプ(週2回、120分)、デイサービス(週3回)、訪問看護(週1回)、ショートステイ(2ヶ月に1回回) ホームヘルプ(週4回、240分)、デイサービス(週3回)、訪問看護(週1回)、ショートステイ(2ヶ月に1回) ホームヘルプ(週7回、540分)、デイサービス(週3回)、訪問看護(週1回)、ショートステイ(2ヶ月に1回) ホームヘルプ(週3回)、デイサービス(週6回)、訪問看護(週0回)、ショートステイ(2ヶ月に1回) ホームヘルプ(週14回、560分)、デイサービス(週3回)、訪問看護(週2回)、ショートステイ(月に1回)
問題点:いろいろの問題点が指摘されていますが、
  • 保険料は大体月額2500円と試算されています。これは消費税に換算して約2%の増税と言われています。
  • また介護認定も簡単ではありません。短時間の聞き取り調査によるコンピューター判断で果たしてちゃんとした認定ができるかどうか疑問視されています。
  • 認定が肢体不自由・寝たきり・痴呆と偏っていることも問題点のひとつです。
  • 介護サービスを提供する施設の整備の遅れも指摘されています。
  • さらに認定を通過し、サービスを受けられたとしても自己負担が1割という点も問題です。この負担は高齢者にとって軽いとは言えないものです。サービスは受けたいが自己負担金に耐えられないケースも出てくるかと思われます。
  • さらに、これまでの医療保険との関係も不明瞭です。
まだこれから検討され、改善されるかと思いますが、国民の負担が増えることは明らかであり、今のままでは、現場の混乱は必至でしょう。このところ医療保険の改悪が続いています。「保険あって介護サービスなし」にならなければいいのですが・・・・。
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