土川内科小児科ニュース 5月号 No.28 (もどる)今月のテーマ:サルモネラ
新聞報道などですでにご存じの事と思いますが、乾燥イカ菓子によるサルモネラ食中毒は、全国で500名以上、福島県でも20名以上の患者さんが報告され、原因となっている製品の回収が順調に進まない事もあり、被害が更に拡大する事が懸念されています。そこで今月はこの問題とサルモネラ菌による食中毒を取り上げてみました。 |
イカ菓子による食中毒について 川崎市における「バリバリいか」を原因としたサルモネラ食中毒に端を発し、全国的な広がりを見せた事件は、青森県の某水産加工業会社が出荷している乾燥イカが原因であることがわかりました。問題は、この会社の乾燥イカは、複数の袋詰め業者さんに販売され、各会社でカット・加工を経て様々な商品名をつけて販売されるため、非常に多くの製品が汚染されている事です。4月22日現在、厚生省が発表している対象製品は20品目に上っています(表1をご参照下さい)。対策は問題となっている製品を食べない事に尽きます。くれぐれもご注意下さい。 |
表1:この表は、すでに製品の回収が終了しているということで、削除いたしました(平成12年3月21日)なお、この表は、厚生省のサルモネラによる食中毒について(第8報)を元に作成したものです。 |
サルモネラ食中毒 サルモネラ菌は、腸炎ビブリオと並んで、代表的な食中毒の原因菌で、平成元年から毎年増加傾向を示しています。サルモネラには、約2000種の仲間があり、そのうち約100種が食中毒の原因となります。中でもサルモネラエンテリティディスはその代表菌種で、サルモネラ食中毒の60〜70%を占めていますが、今回のイカ菓子食中毒の原因菌種は、これとは別の型でした。 |
サルモネラ菌の特徴 サルモネラ菌は、熱に弱く、60度15分で死滅します。また酸にも弱く、生存の限界はpH4〜5です。一方、乾燥や低温には強く、冷蔵庫内でも長期間生存します。さらに、ペットや家畜(特に鶏)が保菌している場合があります。どのくらいの菌で発症するかはまちまちですが、小児ではより少量の菌で発症することがわかっています。潜伏期は10〜30時間(平均12時間です)。 |
サルモネラ食中毒の原因食 原因食としては、鶏卵、食肉、牛乳などが上げられますが、中でも日本では生で食べる習慣がある卵が注目されています。鶏卵がサルモネラ菌に汚染される経路には、産卵時にすでに卵内にサルモネラ菌が認められる場合と、表面に糞便等と共に付着した菌が、卵殻を通過して卵内に侵入する場合とがあるようです。前者の場合は卵が卵巣内にある間に感染するようですが、その頻度は低く、菌数も少ない様です。新鮮な卵には菌の増殖を抑制する因子が含まれているそうです。一方、卵殻通過による汚染ですが、卵殻を水洗いすると菌は卵内により入りやすくなり、また空気の入っている頭の方を上にして保管すると菌が増殖しやすく卵内への移行も早いそうです(北里大学・田口文章先生のHPより引用)。 |
サルモネラ食中毒の症状 基本的には急性胃腸炎で、主な症状は、嘔吐・激しい腹痛・下痢、38度前後の発熱が主なものです。小児では、血便が見られることもあります。通常1〜4日で軽快しますが、希に菌血症、骨髄炎、関節炎などが見られ、死亡率は0.1〜0.2%と言われています。 |
サルモネラ食中毒対策 今回のイカ菓子の場合は別として、サルモネラ菌による食中毒対策は、一般的な注意として、左記の、清潔・迅速・温度管理をきちんと守ることが出発点となります。
|
卵の扱い方について
|
最後に 今回は、サルモネラによる食中毒を取り上げてみました。今年ももう5月、来月は梅雨入り=食中毒の季節です。基本的な対処方はどの食中毒でもほぼ同じですので、上述した事を是非参考にして下さい。 なお、今回はインターネットに公開されている情報を参考にまとめてみました。 |
サルモネラ関係のリンク |