土川内科小児科ニュース 6月号 No.29 (もどる)今月のテーマ:学校保健法改正
保健医療の進歩と生活環境の変化及び新しい感染症の発見などにより、これまでの伝染病予防法が実状にあわなくなったことを踏まえ、平成10年10月2日に感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)が制定され、平成11年4月1日から施行されました。これに伴い、学校における伝染病予防の見直しも当然行われ、学校保健法施行規則の一部が改正されましたので、今月はこの問題を取り上げてみました。 | |
まず、学校保健法のもととなる感染症新法で対象とする感染症は表1に示すものです。一方学校で予防すべき伝染病では、「感染症新法の一類感染症と二類感染症」を第一種の伝染病、「伝染病のうち飛沫感染するもので、児童生徒の罹患が多く、学校において流行を広げる可能性が高いもの」を第二種の伝染病、「伝染病のうちで学校教育活動を通じ学校において流行を広げる可能性のあるもの」を第三種の伝染病としました。具体的には、表2に示す疾患が対象となります。ここで気がつくのは、感染症新法では差別的な意味合いをもつという理由で伝染病という言葉が使われなくなったのに対して、学校保健法では、伝染病という言葉が残されました。その理由ですが、感染症にはペストやコレラの様に人から人へ伝染する疾病(伝染性感染症)と破傷風の様に人から人へは伝染しない疾病(非伝染性感染症)があり、伝染病という概念は残っており、学校保健法では、この人から人へ伝染する疾患を伝染病とすると説明されています。 | |
「出席停止という問題が学校伝染病の場合には出てきますが、基本的な考え方については、次のように記載されています。 | |
学校においては,感染症の中でも人から人に伝染する疾病、すなわち伝染病の流行を予防することが、教育の場・集団生活の場として望ましい学校環境を維持するとともに、健康な状態で教育を受けることができるためにも極めて重要である。 このため、学校保健法施行規則において、学校において予防すべき伝染病の種類と出席停止の期間の基準等が定められている。 感染症の伝染を予防するために、感染症患者は、病原体を多量に排泄しており、他人に容易に感染させる状態の期間は集団の場に入ることを避ける必要がある。また、健康が回復するまで治療するなどの対策を講じる必要がある。 出席停止の期間は、感染様式と疾患の特性を考慮して、それぞれの疾患について人から人へ伝染する程度に病原体が排泄されている期間を基準としている。このため、微量の病原体が咽頭等に存在しても、他人に感染するおそれがない程度であれば、出席停止の措置を講じる必要はない。集団の中で流行する場合は、飛沫感染によることが多く、咽頭でウイルスが増殖している時期が出席停止を必要とする。一方で、糞便中に長期(一か月程度)にわたってエンテロウイルスなどが排泄される場合については、手洗いの励行などにより他人への伝染のおそれは低くなるので、出席は可能である。 なお、児童生徒等に対する出席停止の措置等において差別や偏見が生じることのないように、各学校においては十分に配慮する必要がある。このためにも児童生徒等が病気や治療、予防についての正しい知識や態度を身に付けることが重要である。」
(学校において予防すべき伝染病の解説から)
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出席停止の期間については、第一種の伝染病では、治癒するまで、結核を除く第二種の伝染では、それぞれの伝染病毎に定めた出席停止の期間となりますが、病状により学校医その他の医師が伝染のおそれがないと認めたときは、それにこだわらない。結核及び第三種の伝染病では、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまでとなっています。具体的な疾患名の出席停止の期間は表3の様になっていますが、その他の感染症については、はっきりとした規定がないために、時に混乱が見られることがあるようです。今回文部省では、(財)学校保健会に委嘱し、その他の感染症についても、出席停止の期間についての見解を示しましたが、それによると表3に示す以外の疾患では、伝染性紅斑は、発疹が見られる時期には感染力はほとんど消失しているので、登校可としています。また、通常出席停止の措置は必要ないと考えられる伝染病の例として、アタマジラミ、水いぼ(伝染性軟属腫)、とびひ(伝染性膿痂疹)を上げています。 今回具体的な疾患について、標準的な考え方が示されたことにより、同一地区において、診察を受けた医師により見 解が違うことによる混乱は解決していくものと思われます。指定の感染症にかかってしまったときには、いずれの感染症もこじらすと大変な疾病ばかりですから、ご自身のためにも、また周りへの流行を防ぐためにも、早めに医師の診察を受け、その指示に従って下さい。 | |
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