土川内科小児科ニュース  12月号  No.35 
もどる

  今月のテーマ:スキンケアー

 今年は暖冬との予想が発表されていますが、冷え込む日も多くなり、風邪が少しずつ流行し始めました。今年はインフルエンザの予防接種を希望する方が全国的に多く、ワクチンが不足している様ですが、皆さんの冬を迎える準備は万全でしょうか。   ところで、冬になると空気が乾燥するために、肌がかさかさしてきて、かゆみが出てきやすくなります。60歳以上の人では、冬には95%以上の方がドライスキン(皮膚が乾燥した状態)になり、そのうち半数以上の方がかゆみを訴えるという調査結果も報告されています。ドライスキンは高齢者のみの問題ではなく、小児でもよく見られる問題です。乳児検診や学校検診をしていると、以前よりも体質的に皮膚が乾燥しているアトピー皮膚のお子さんの割合が増えてきている様に思われます。老人性皮膚掻痒症の場合もアトピー性皮膚炎やアトピー皮膚の場合も、スキンケアー(皮膚のお手入れ)によって乾燥している皮膚に潤いを与えることが非常に大切です。そこで、今月はスキンケアーについて取り上げてみました。
 正常な皮膚とは:皮膚は、体の表面から「表皮」、「真皮」「皮下組織細胞」という3段階の構造になっています。さらに「表皮」を細かく分けると「角質層」「透明層」、「顆粒層」、「有棘層」、「基底層」という順番に層状になっています。一番下の「基底層」で、血液で運ばれてきた栄養分をもとに基底細胞が、新しい細胞を次々に作り「有棘層」、「顆粒層」へと順番に押し上げて、一番上の角質となります。
 保湿のメカニズム:角質細胞同士の隙間は、セラミドと呼ばれる細胞間脂質で埋められており、このセラミドに水分が蓄えられています。アトピー性皮膚炎の方は、このセラミドの量が少なく、また加齢とともにセラミドの量が減少します。さらに、角質層の表面には、毛穴の横にある皮脂腺から分泌される脂分と汗腺から出る水分(汗)とが混じりあって皮脂膜が形成され、水分の蒸発を防いでいます。皮脂の分泌は、女性では40歳代、男性でも50歳代を過ぎると低下してきます。このほか、角質層内には、水分保湿成分である天然保湿成分(ナチュラルモイスチュアライジングファクター)がありますが、同様に加齢とともに減少します。
 冬のお肌のトラブルの原因について:冬は空気の乾燥の他に、気温が低いことや、皮脂の分泌量が夏の半分以下になるという悪条件が全部そろってしまいます。おまけに密閉度の高い締め切った部屋でのエアコンによる暖房によってさらに室内の湿度が下がり、熱いくらいの室内と寒い室外を出入りするわけですからそれがお肌に良い訳がありません。さらに、低温のために血液の循環が悪くなり、皮脂や汗の分泌量が減少しますので皮脂膜も失われやすく、角質層の水分の蒸発に拍車がかかり、肌が乾燥した状態になるわけです。皮脂膜が減少してくると、当然角質層以下が刺激を受けやすくなってしまい、また、微生物等の異物の侵入を容易にします。異物が侵入すると、アレルギー反応などが起こって皮膚炎が生じ、かゆみを起こす物質が産生されてかゆみが生じます。そこを掻くことにより皮膚炎がさらに悪化します。
 乾燥肌対策:ドライスキンの本態は、保湿能の低下による角質水分量の低下ですので、その対策としては、水分の補給、脱脂の抑制、保湿成分の補充が必要な対策です。このためには、毎日欠かさずにスキンケアーを行うと同時に日常生活習慣の是正が大切となります。
 入浴について:皮膚の汚れや汗は皮膚炎のもととなり、かゆみを増しますので、皮膚を清潔に保つことは、スキンケアーの大切な目的の一つです。しかし、熱いお湯はかゆみを増しますので、ややぬるめのお湯にします。また、あまり長く入ることも感心しません。皮膚がふやけてしまうような長湯はさけましょう。  次に汚れの落とし方ですが、皮膚の汚れの多くは皮脂膜に紛れ込んでいるため、皮膚を清潔にするためには、石鹸やシャンプーを使って皮脂も一緒に洗い流すことが必要です。しかし、汚れは角質をはがさなくても除去できますので、ナイロンのタオルやブラシを使っての垢こすりは、必要ありません。手や、お肌にやさしい素材のものでやさしくなでるように洗ってください。それでもお肌の汚れは充分に落ちるのです。髪を洗う時も、爪を立ててゴシゴシはいけません。指の腹を使って頭皮を刺激しないように気を付けてください。 入浴によって皮膚に水分が浸透していくと、皮膚は潤いを取り戻しますが、そのままにしておけば水分が蒸発して再び乾燥した状態に戻ってしまいます。そこで、後述する保湿剤を塗って油分を補い、バリアを作っておきます。  石鹸は、お肌に合わないものでなければ、ごく普通のものでかまいませんが、あまり洗浄力の強いものや香料などの添加物の多いものは、油分を除去しすぎますので、避けた方が無難でしょう。また、十分にすすいで、石鹸やシャンプーが残らないようにします。 クアタイムなどの保湿効果のある入浴剤の使用は、日本人の入浴パターンを考えると合理的な方法と思われますので、かぶれるなどの問題がない場合は、一度試してみる価値があると思います。
 生活環境への注意:日常生活に関する工夫では、部屋の温度や湿度を適度に保つことがまず上げられます。暑いとかゆみが増しますので、過度の加温はいけません。また、加湿のしすぎは結露を招き、カビやダニなどを増やす原因となりますので、気をつけてください。また、肌着は刺激の少ない木綿の肌着がおすすめで、かゆみ刺激の強いウールのセーターなどは、肌に直接触れないような注意が必要です。さらに髪は顔や首に掛からないように工夫をしたり、寝ている間に無意識に掻いてしまっても傷が付きにくいように爪を短く切ってヤスリでなめらかにしておくなどの対策も有効です。
保湿効果 保護効果 機能回復効果
セラミド
ヒルドイド × ×
白色ワセリン ×
尿素製剤 × ×
保湿剤:現在使用できる保湿剤には、右の表の様な色々なものがあります。どれが良いかは、人によりまちまちですので、実際に使ってみないとわかりません。最も大切なことは、毎日お風呂上がりにお手入れを続けることです。気が向いたときだけ塗るのでは、効果も期待できません。毎日のお手入れを積み重ねる事で乾燥肌を克服してください。
トップへ