【抗生物質の特徴と使用法(内服薬)】

A)ペニシリン系
 1)ペニシリン製剤
  1.フェノキシメチルペニシリンカリウム(PCV)
    ブイカルK散 20万単位/g 160〜240万単位/4〜6×1
     連鎖球菌(腸球菌を除く)、肺炎球菌、淋菌、ジフテリア、放線菌、
     ブドウ球菌   
 2)広範囲ペニシリン製剤
  1.アンピシリン(ABPC)
    ペントレックス 250mg/P 4〜12P/4〜6×1
     赤痢菌、大腸菌、変形菌、インフルエンザ菌、腸球菌、梅毒、溶連菌、
     肺炎球菌、淋菌
  2.アモキシシリン(AMPC)
    サワシリン 250mg/P 3〜4P/3〜4×1      
     血中濃度がABPCの約2倍増加する。
  3.塩酸タランピシリン(TAPC)
    ヤマシリンカプセル 250mg/P 3〜4P/3〜4×1
     ABPCのプロドラッグ。血中濃度の上昇がよい。
  4.塩酸バカンピシリン(BAPC)
    バカシル 250mg/T 2〜4T/2〜4×1       
     ABPCのプロドラッグで吸収は約2倍、抗菌力はほぼ同じ。胃腸障
     害がやや少ない。   
 3)複合ペニシリン製剤
  1.アモキシシリン:クラブラン酸カリウム=2:1
    オ−グメンチン 375mg/T 3〜4T/3〜4×1
     アモキシシリンとクラブラン酸(βラクタマーゼ阻害剤)の合剤。ク
     ラブラン酸はそれ自身の抗菌活性は低いが、βラクタマーゼ(ペニシ
     リナーゼ、セフロキシマーゼ)と不可逆的に結合し、その酵素活性を
     半永久的に不活化する作用を有する。
  2.トシル酸スルタミシリン(SBTPC)
    ユナシン 375mg/T 2〜3T/2〜3x1
     アンピシリンとスルバクタムの合剤。βラクタマーゼ産生性ABPC
     耐性菌に有効。単独投与時より高い血中濃度が得られる。スルバクタ
     ムはそれ自身はアチネトバクターとナイセリアにのみ、抗菌活性を有
     する。また、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ、セフロキシマーゼ、
     セファロスポリナーゼ)に対して、阻害活性を有する。 

B)セフェム系製剤
 1)第一世代セフェム 
  1.セファレキシン(CE×)
    L−ケフレックス 500mg/g 2〜4P/2〜4×1
     緑膿菌、プロテウス以外のほとんどのグラム陽性・陰性球菌および桿
     菌に有効。ペニシリン耐性菌にも有効。持続性製剤、噛まずに服用。
  2.セファクロル(CCL)
    ケフラ−ル 250mg/P 3〜6P/3×1        
     CEXより抗菌力がすぐれているが、吸収は劣る。
     CEX1000mg=CCL750mg。
  3.セファドロキシム(CDX)
    セドラ−ル 250mg/P 3〜6P/3×1        
     吸収はCEXとほぼ同等で、グラム陽性菌に対し数倍すぐれている。
     ドライシロップもある。100mg/g、20〜40mg/kg。
 2)第二世代セフェム
  1.セフロキシムアキセチル(CXM−AX)
    オラセフ 250mg/P 3〜6P/3×1
      本剤それ自体は抗菌力はなく、腸管内で脱エステル化されてセフロキ
     シム(CXM)として吸収され、抗菌力を発揮するプロドラック。
     CXMは第2世代のセフェム系抗生剤で、注射薬はジナセフとして発
     売されている。抗菌スペクトルは、βラクタマーゼに安定であるので、
     第一世代セフェムより広く、大腸菌や肺炎桿菌のセファロスポリン耐
     性株やシトロバクター、プロテウス、エンテロバクターにも有効。黄
     色ブ菌に対してはCEZとほぼ同等の抗菌力を有する。食後のほうが
     空腹時より吸収率が良く、約50%がCXMとして吸収される。
 3)第三世代セフェム
 1.セフィキシム(CFIX)
    セフスパン 100mg/P 2〜4P/2×1
     グラム陽性・陰性菌に広範囲な抗菌スペクトラムを有する。グラム陽
     性菌では黄色ブ菌にはケフレックス(CEX)より抗菌力が劣るが、
     化膿レンサ球菌、肺炎球菌には抗菌力が強い。グラム陰性菌では淋菌、
     ブランハメラ、大腸菌、肺炎桿菌、インドール陰性プロテウス、イン
     フルエンザ菌などに対して、抗菌力が格段に強化され、さらにシトロ
     バクター、エンテロバクター、セラチア、インドール陽性のプロテウ
     スにも有効である。但し、緑膿菌には無効。βラクタマーゼに対して
     はきわめて安定。血中濃度が維持されるので1日2回の服用でOK。
  2.セフテラムピボキシル(CFTM−PI)
    トミロン 100mg/P 3〜6P/3x1
     抗菌スペクトラムに関してはCFIXとほぼ同等。本剤はプロドラッ
     クで、内服後すみやかに吸収されて腸管壁の特異的なエステラーゼに
     より加水分解されて、抗菌力を有するセフテラムに変化する。

C)マクロライド系
  1.エリスロマイシン(EM)
    エリスロシン 250mg/T 4〜6T/4〜6×1
     ブドウ球菌、マイコプラズマ、レンサ球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、淋
     菌、ジフテリア菌、梅毒などに有効。ドライシロップは100mg/
     g、25〜50mg/kg。100mg錠もある。

D)テトラサイクリン系
  1.塩酸ミノサイクリン(MINO) 
    ミノマイシン 100mg/P 2P/2×1
     グラム陰性球菌、陽性球菌、陰性桿菌、リケッチア、大型ウイルスな
     どに有効。静菌性抗生物質だが、幅広い抗菌スペクトラムを持ち、耐
     性菌もできにくい。

E)ポリペプチド系
  1.硫酸ポリミキシンB(PL−B)
    ポリミキシンB 100万単位/T 3〜4T/3〜4×1
     グラム陰性桿菌に有効。腸管から吸収されない。腸管感染症の治療、
     予防に有用だが、高価。

F)アミノグリコシド系
  1.硫酸カナマイシン(KM)
    カナマイシン 250mg/P 4〜8P/4×1
     グラム陽性・陰性菌、結核菌に有効。ポリミキシンBとほぼ同じ。廉
     価だが耐性菌が比較的できやすい。

G)その他
  1.塩酸バンコマイシン(VCM)    
    バンコマイシン 500mg/V 2g/4×1
     クロストリジウムデフィシールによる偽膜性腸炎と骨髄移植時の消化
     管内殺菌が適応となる。非常に高価。

H)サルファ剤系
  1.スルファミチゾ−ル
    ウロサイダル 250mg/T 4〜12T/4〜6×1
     大腸菌による膀胱炎、腎盂腎炎に用いる。
  2.サラゾスルファピリジン
    サラゾピリン 500mg/T 4〜16g/4〜6×1
     主として、潰瘍性大腸炎、限局性大腸炎などに用いられる。
  3.ST合剤:スルファメトキサゾ−ルとトリメトプリムの合剤
    バクタ 2〜4T/2〜4x1
     慢性尿路感染症、慢性呼吸器感染症に用いられる。カリニ肺炎の治療
     および予防に有用。カリニの治療に用いるときは12T/日。

I)ピリドンカルボン酸系(キノロン系)
  1.ナリジクス酸(NA)
    ウイントマイロン 250mg/T 2〜8T/2〜4×1
     グラム陰性球・桿菌に有効。耐性菌が比較的できやすい。
  2.オフロキサシン(OFLX)
    タリビット 100mg/T 3〜6T/3×1
     グラム陽性・陰性菌、嫌気性菌に有効。
     グラム陰性菌に対する抗菌力は、NAの10〜100倍でニューキノ
     ロン系に属する。制酸剤により吸収が阻害される。他の抗菌剤と交差
     耐性がなく、βラクタマーゼに抵抗性。レンサ球菌、肺炎球菌には効
     力が劣る。過敏症状、中枢神経症状(消炎鎮痛剤との併用で痙攣など)
     テオフィリン血中濃度上昇などに注意。

J)抗真菌剤
  1.ナイスタチン(NYS)
    ナイスタチン 50万単位/T 3T 3×1
     カンジダに有効。ほとんど吸収されないので予防投与にも用いられる。
  2.フルシトシン(5−FC)
    アンコチル 500mg/T 100〜200mg/kg/日
     カンジダ、クリプトコッカスに有効。耐性できやすい。細粒もある。
  3.アンフォテリシンB(AMPH)
    ファンギゾンシロップ(10%) 3〜6ml/3×1
     大部分の深在性真菌症に対して有効だが、吸収されにくい。シロップ
     は主として、消化管真菌症の予防に用いられる。

K)抗結核剤
  1.イソニアジド(INH)
    イスコチン 100mg/T 2〜4T/2×1
     末梢神経障害の副作用に注意(ビタミンB6の内服で防げる)。
  2.リファンピシン(RFP)
    リファジン 150mg/T 3T/1×1
     肝障害、インフルエンザ様症状、血小板減少症などに注意。
  3.エタンブトール(EB)
    エブトール 250mg/T 3〜4T/1〜2×1
    視力障害に注意。

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