はじめに

「臨床医は曖昧な知識で診療にあたることは厳に慎むべきであり、生涯に渡り学習を継続しなければならない」ということはよく言われることですが、救急の現場においては、適切かつすみやかな対応が要求されることが多く、日頃の修練が特に大切であります。しかし、医学の進歩に伴い、日常の臨床において必要とされる医学知識は膨大であり、そのすべてを正確に記憶していることは不可能と言わざるをえません。そこで、必要に応じて参照でき、当院の救急フロアーにおける一応の治療指針となるマニュアルが必要と考え、本書を作成しました。

このマニュアルは、[実際患者を目の前にして]という想定のもとに、単なる手順書となってしまうことのないよう、どういう点が大切なのか、なにに注意すべきなのか、なぜそうなのかなどという点についても冗長となることがないよう触れながら、種々の参考資料をもとに、筆者らの経験に基づくコツの様なものを随所に取り入れてということを基本姿勢として、実際診療の流れに沿って記載しました。

基本的に救急の現場で必要な知識を中心としましたが、一次救急からより高次の救急へは引き続き移行することが多いので、重症疾患の管理についても対応できるよう主要疾患についてはやや詳細に記載しました。その結果、集中治療マニュアル的な内容も含んでおります。さらに集中治療において頻用される薬剤については用量・代謝・適応・副作用・注意事項・相互作用・禁忌などについてまとめ、利用の便をはかりました。また日頃ベッドサイドで役に立つと思われる事項についても一部触れました。しかし、膨大な情報をコンパクトにまとめることは容易ではなく、不十分・不適切な箇所を数多く残しております。今後多くの人々からご意見を賜り、実地臨床の現場において役立つマニュアルにしていきたいと思います。

また今回はページ数の関係で内科的疾患中心のマニュアルとなりましたが、今後諸先生方にご協力をいただき、外科的疾患も含んだマニュアルにしていけたらと考えております。

最後に、消化器系疾患につき御指導いただきました望月副院長・池田先生・豊原先生、そして日頃臨床の現場で御指導を賜っております富永院長・小野副院長に深謝致します。また小児疾患の見方については、茂庭診療所長 中川先生に御講義をいただき、さらに原稿の推敲まで御指導いただきました。厚く御礼申し上げます。

1990年 1月

  仙台オ−プン病院 内科

                 土 川 研 也、横 道 弘 直、宗 像 敬



  |ホームページにもどる救急マニュアルの目次にもどる