【痙攣】        

A)分類と鑑別の要点
1)全般性痙攣
 1.欠神(absence):基本的に小児のてんかん
        定型:小発作(petit mal)4−8才で始まる短時間の意識消失発作
        非定型:Lennox-Gastaut症候群を含む。欠神に他の全般性痙攣が加わる。
 2.大発作(grand mal)
        a)5才から30才の間に始まる。(これらは通常特発性)
        b)30才以降の発症例は脳腫瘍、脳血管障害に続発するものがほとんど。
        c)代謝性の原因で起こることもある(これらの原因をつかむことは重要!)
        d)数分から数日に及ぶ過敏状態の前駆期があることが多い。
        e)急激な意識消失後、全身を固く伸展させる(強直性痙攣)。
        f)その後、躯幹、四肢を間代性に痙攣させ、これを繰り返しながら治まる。
        g)最終的には昏睡状態となり、その後意識を回復する。
        h)部分発作が全体に広がったものとの鑑別は重要!
 3.ミオクローヌスてんかん(myoclonic seizure)
        a)点頭てんかん(infantile spasm):1歳以下の乳児にみられ、急に頚部
     と体幹を前に折るような発作。脳波ではhypsarrhythmiaと呼ばれる特有
    な所見を呈する。背景に器質的病変があり予後不良である。
        b)その他、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)など
                注)尿毒症、肝性昏睡などで、異常脳波を伴わないミオクローヌスを
              しばしば見るが、厳密にはこれはミオクローヌスてんかんとは呼
              ばない(脳波異常を伴うもののみ)。しかし、臨床的にはこちら
              の方がずっと高頻度。
 2)部分痙攣(焦点性痙攣)
  1.単純性(意識障害を伴わない)
        a)脳のある一部から生じる痙攣発作。
        b)運動性、感覚性、自律神経性の3種があり、運動性がもっとも高頻度。
        c)広がりの型により、次の3つに分けられる。
                1)部分発作のままで治まる。
                2)近接の大脳皮質に広がる(Jackson型)
                3)全般性痙攣に移行する(これと、元々の全般性痙攣は鑑別すべき)。
        d)発作の開始状況により焦点を推定できる(重要!)
        e)時に発作後、一時的に焦点に一致した領域にマヒを残す(Toddの麻痺)
        f)部分発作は脳に局所的病変があることを示唆する。
   g)全般性発作との鑑別は原疾患を考え治療する上で極めて重要!
  2.複雑性(精神運動発作ー意識障害を伴う)
        a)側頭葉に原因がありおこる。
        b)10才から30才の間に始まるのが普通。
        c)30才以降に始まるものは、脳腫瘍、ヘルペス脳炎などの器質的疾患を
    考えるべきである。
   d)明らかに統合され、合目的活動に関連しており一見痙攣の様に見えない。
        e)様々な精神異常を伴う。

B)てんかん・痙攣の原因
 1)遺伝及び出生時の影響:遺伝性、先天異常(染色体異常・先天性代謝異常
   を含む)、出生前の影響(感染・薬物・低酸素)、周産期の影響(出生時
   外傷・低酸素・感染)
 2)感染(多くは焦点性):髄膜炎、硬膜外または硬膜下膿瘍、脳膿瘍、脳炎
 3)中毒(多くは全般性):一酸化炭素、金属(鉛・水銀)、有機物(シンナ
   ー・アルコールなど)、薬物
 4)外傷(焦点性):脳挫傷、硬膜外血腫、硬膜下血腫
 5)脳血管障害(焦点性):クモ膜下出血、脳内出血、脳梗塞、高血圧性脳症
 6)代謝性(多くは全般性):水電解質異常(水中毒・低Na血症・低Ca血
   症・低Mg血症)、低血糖、尿毒症、肝性昏睡、非ケトン性糖尿病性昏睡
 7)脳腫瘍(多くは焦点性):原発性脳腫瘍(astrocytoma、 meningioma、
   oligodendrogliomaに多い)、転移性脳腫瘍(白血病などの髄膜浸潤を含む)
 8)その他:Adams-Stokes症候群、低酸素血症(原因は何でも可)、熱性痙攣、
      破傷風、神経変性疾患(アルツハイマー病など)、脱髄性疾患(多発性硬
      化症)、ポルフィリア、ヒステリー(厳密には痙攣とは言いがたいが高頻
      度)

C)痙攣・てんかん患者の診察の要点。
 1)まず、止めることを考える。
  1.呼吸、循環の管理を忘れずに(特に気道の確保)。
  2.痙攣については型、原因によらず治療はほぼ同じ。
  3.まずはセルシン10mg 静注する!
 2)平行して原因の検索を行う(これは、別の医師が行うべき)。
  1.発作の開始状況は極めて重要な情報となる。(病歴は極めて重要)
  2.既往歴、家族歴も忘れずに。
  3.代謝性疾患が原因となっているときが案外多い。この場合、抗痙攣剤に抵
   抗性のことが多いので原因の同定を急ぐ。血算、生化学的検査、血液ガス、
   血糖、電解質(カルシウムも)を忘れずに。

D)痙攣の救急治療
        1)アンビューを用意し、5%グルで血管を確保したら、
    セルシン10mg 静注(5分以上おいて2回まで)
        2)止まっても止まらなくても、心電図をモニターしながら、
    アレビアチン250mg 静注(5分以上かけて、1回)
        3)アレビアチンを静注後も痙攣が持続しているときは、
                         10%フェノバール 1A 筋注(2回まで)
   注)呼吸抑制と血圧低下のため原則として静注は禁忌。行うなら生食で希
     釈し、10〜20分かけて投与。
    4)これでも止まらないときは、
    挿管後、ネンブタール 50〜100mg 静注
        5)なお治まらないものは、
         ミオブロック4mg 静注
          注)これは見かけ上、筋の動きを止めただけで、脳波上は発作が続いて
       いることが多い。従って、脳波をモニターしつつ、他の抗痙攣剤で
             発作を抑えるのが望ましい(実施可能かどうかは別として)。
     6)再発作予防として、
                                アレビアチン250mg/day 静注 または
                                アレビアチン200〜300mg(2〜3×1) 経口
                
・参考文献
 *脳血管障害の項にまとめて記載

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