【胸痛について】

A)原因
 1)一般的原因
   1.心筋梗塞         9.不整脈
  2.狭心症                 10.過換気症候群
  3.急性心膜炎             11.心臓神経症(NCA)  
   4.解離性大動脈瘤         12.食道炎、食道痙攣
   5.自然気胸          13.消化性潰瘍
  6.肺塞栓症、肺梗塞       14.帯状疱疹
    7.肺炎                   15.肋骨骨折、肋軟骨炎
  8.胸膜炎                 16.肋間神経痛

B)重症度判定のためのチェックポイント
 1)バイタルサインのチェック:血圧、脈拍、呼吸、意識、体温
 2)ショック症状の有無:血圧低下、皮膚蒼白・湿潤、意識レベル低下
 3)心不全の有無:呼吸困難、起坐呼吸、湿性ラ音、泡沫状痰、血痰、頚静脈
   努張、肝腫大、浮腫
 4)血圧異常の有無:高血圧、低血圧、左右四肢の血圧差
 5)脈拍異常の有無:頻脈、徐脈、不整脈、四肢動脈の脈拍差
 6)胸部理学所見:心音、過剰心音、心雑音、摩擦音、血管雑音、肺ラ音、呼
   吸音の増減および左右差
 7)腹部理学所見:圧痛、筋性防御、腫瘤、血管雑音、グル音
 8)その他:発熱、皮疹などの有無

C)胸痛をきたす主要疾患の特徴的所見(病歴、理学所見、心電図、胸部X線)
 1)心筋梗塞(P61)
  1.30分以上続く左前胸部または胸骨中央部の激しい絞扼感、圧迫感で、顎、
   左肩、左腕に放散することが多い。狭心症の病歴があるとは限らない。
   2.上腹部痛、悪心、嘔吐などの胃腸症状で発症することもある(下壁梗塞)。
  3.梗塞部位に応じた誘導に上に凸(upwards convex)のST上昇とその対側
   誘導に reciprocal changeを認める。発病の早期にはこれらの典型的所見
    はなく、T波増高が比較的特徴的である(hyperacute T)。
 2)狭心症(P57)
    1.発作性の左前胸部痛、または胸骨中央部の絞扼感、圧迫感で左肩、左上肢
   に放散することもある。通常胸痛は2〜3分で消失。また亜硝酸剤が著効
   する。運動、労作、食事などの誘因があれば労作狭心症。特に誘因がなく、
   安静時や夜間に生じたものは要注意!。
    2.胸痛の消失とともに、心電図所見(一過性のST上昇・下降、T波平低化
   や陰性化)は消失する。
    3.不安定狭心症の場合は入院が必要。
      症状が3週間以内に生じ、最終発作が1週間以内におきているもので
     a)新しい労作狭心症(new angina of effort)
     b)症状に変化のあるもの(changing pattern)
     c)新しい安静狭心症(new angina at rest)
 3)急性心膜炎
    1.鋭い前胸部痛で、心筋梗塞の痛みに似ることもあり、症状のみからの鑑別
   は必ずしも容易ではない。前傾姿勢で軽快したり、発熱などの感染症状が
   先行することもある。
    2.心膜摩擦音、心音減弱、広範囲のST上昇、胸部レ線での心陰影の拡大、
   心エコー法による心嚢液の検出、白血球増多、血沈亢進などが参考になる。
    3.本症におけるST上昇は、aVR・V1をのぞく全ての誘導に生じ、上方に凹
   (upwards concave)で、monophasic pattern はみられず、reciprocal 
      change を伴わず、5mmを越えることは希で、PR部分の下降を伴うなど
   の特徴を有している。
 4)解離性大動脈瘤(P71)
  1.激烈な胸痛、背部痛、心窩部痛が急激に発生し長時間持続する。解離の進
   展に伴い疼痛部位が移動するのが特徴。大動脈弁閉鎖不全を伴うと心不全
   症状を呈することがある。
    2.ショック症状にもかかわらず、血圧は正常か高い。脈拍の左右差、血管雑
   音などが参考となる。
    3.胸部レ線:縦隔陰影の拡大。UCG:大動脈の拡大と内膜剥離(intimal 
   flap)、心タンポナーデの診断に有用。CT(+造影)、大動脈造影で 
   診断が確定する。
 5)自然気胸
  1.呼吸困難を伴う突然の一側性の胸痛。
  2.呼吸音の減弱。
  3.胸部レ線で診断は確定する。
 6)肺梗塞、肺塞栓症(P73)
  1.呼吸困難、乾性の咳、血痰を伴う押しつぶされそうな胸痛。長期臥床、下
   肢血栓性静脈炎、骨折、外傷、手術、悪性腫瘍、産褥期、うっ血性心不全、
   経口避妊薬の内服などが誘因となる。
    2.頻呼吸、頻脈、胸膜摩擦音、喘鳴、肺動脈第U音亢進、発熱、右心不全徴
   候(頚静脈怒張・肝腫・浮腫)、チアノーゼ。
   3.急性右心負荷所見(肺性P・右軸偏位・右脚ブロック・S1Q3・時計軸回
   転・心房性不整脈など)。血液ガスはPaO2低下、PaCO2の低下。
   胸部レ線は様々(肺動脈陰影の拡張・閉塞血管領域で肺野血管影の減少・
   患側横隔膜挙上・胸水貯留・浸潤影など)
 
・参考文献は各論を参照  

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