健康最前線(No.67)
今回のテーマ:夏の健康 PDFファイルへ
冬にインフルエンザが流行するのに対し、夏には夏の気候が好きなウイルスの活動が活発となり、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱などが多く見られるようになります。
■ヘルパンギーナ:コクサッキーA群・B群、エコーウイルス群など多くのエンテロウイルスが原因として知られています。好発年齢は1歳代で、90%が4歳以下です。通常、 2〜5日の潜伏期のあとに、39〜40度の高熱で発症します。発熱後まもなく、のどの奥に水疱ができ、それが破れて潰瘍となり、痛みのために食事や水分を とることができず脱水症状が見られることもあります。予後は良好で、数日で解熱し7日以内に治癒します。基本的にはあまり心配のない疾患です。登校禁止に は指定されておりませんが、幼稚園や学校は、熱が下がって口内の痛みがなくなるまではお休みするのが良いと思います。
■手足口病:名前の通り、手・足・口・おしりなどに発疹(水疱)ができる病気で、コクサッキーA16やエンテロ71などのウイルス感染により発症し、数年おきに流行し ます。好発年齢は1〜4歳で潜伏期間は3〜5日です。伝染の様式は、気道分泌物・便の直接・間接接触と飛沫感染で、ウイルスの排泄は、咽頭から1〜2週 間、便から3〜5週間と非常に長く続くため、隔離は不要とされています。発熱は見られないか、あっても38度前後で、高熱が続く事はほとんどありません。 のどが痛いためによだれが多く出たり、食べ物を受け付けなかったりする事がありますので、脱水にならないように、刺激が少なく口当たりの良い水分を中心に 与える様な対応が必要となります。通常、軽症で自然に良くなりますが、ごくまれに髄膜炎を合併することがあります。この疾患も登園を禁止する必要はありま せんが、熱があったり口内炎がある間は幼稚園や保育園をお休みする方が良いでしょう。なお、便から長期間にわたりウイルスが排泄されますが、きちんと管理 されたプールでは塩素によりウイルスが死滅しますので、プールによる感染の心配はまずないと考えて良いと思います。
■咽頭結膜熱:アデノウイルス3型、7型などが原因です。感染経路として、眼への直接感染、飛沫感染、便から口への感染などが知られています。汚染されたプールの水を介 して流行する事があるため、プール熱の別名がつけられました。夏から秋にかけて、主として学童を中心に流行します。39〜40度の高熱が4〜7日続き、喉 の赤みと痛み、目の充血が特徴です。頭痛、吐き気、腹痛、下痢を伴うこともあります。治療は対症療法が主体となります。プールの遊離塩素が0.35ppm あれば感染は予防できますが、水泳後の洗眼、うがいも大切ですので、励行しましょう。
■伝染性膿痂疹(とびひ):この病気は、細菌が原因です。虫さされ・あせも・すり傷などジュクジュクしているところに、ぶどう球菌などの化膿菌が感染すると起こります。かゆみのある 水疱ができ、破れるとかさぶたを作ります。かゆいのでかくと菌が飛び散って水疱があちこちにでき、その広がり方が飛び火みたいなので「とびひ」という名前 でも呼ばれます。治療は患部をよく消毒し、抗生剤入りの軟膏を使います。ひっかくことで広がりますので患部はガーゼでおおう様にします。ひどい時は抗生剤 の内服を併用します。治るまではプールはさけてください。お風呂はシャワーでしたらOKです。
■汗疹(あせも):汗の出てくるところ(汗腺)が詰まり、汗が外に出られずにたまってしまったものがあせもです。ひたい・首の周り・胸・背中など汗のたまりやすいところに小 さくて赤いぶつぶつができます。通常は赤いあせも(紅色汗疹)ですが、色のついていない白いあせも(白色汗疹)もあります。1日2〜3回お風呂に入れ、よ く汗をながして皮膚を清潔にし、涼しい環境にしてあげれば数日で治ります。なかなか良くならない場合には、塗り薬を使うこともありますが、あせもは治療よ り予防が大切です。
■虫さされ:蚊・ブヨ・ノミ・ダニなどに刺されたり、かまれたことが原因でかゆみや痛み、発赤・はれなどの症状がでます。はれは翌日の方がひどくなることもあります。 刺されたところを石けんと流水でよく洗い、抗生物質入りのステロイド軟膏を塗るのが一番です。大きい蜂に刺された時は、ショック症状を起こす可能性もあり ますので、できるだけ早く医療機関を受診してください。
■日焼け(日光皮膚炎):こんがりと焼いた肌って魅力的ですね。子供の頃には 色の黒さを自慢しあった事を思い出します。海岸で甲羅干しと言うのも海へいく楽しみの一つです。でもちょっと待って下さい。日焼けって、皮膚ガンのもと だってご存じでしたか。 1年のうちで5月から8月は紫外線の量がもっとも多くなる季節です。紫外線には、波長の長い長波長紫外線(UVA)と波長の短い 中波長紫外線(UVB)がありますが、日焼けは主にUVBの仕業です。この紫外線(特にUVB)は、シミやしわといった皮膚の老化(光老化)を引き起こす だけではなく、遺伝子の本体であるDNAを傷つけるため皮膚ガンの原因となることがあるのです。通常この傷はほとんど元通りになおされますが、いつもうま くなおされるとは限りません。時に間違い(突然変異)が起こるのです。子供の頃からの繰り返される日焼けで、突然変異が蓄積されていき、60歳を過ぎると 皮膚ガンになることがあります。 この日焼け対策は日傘や帽子で直射日光をさけ、海などへ行くときには女性に限らず子供も男性も日焼け止めのクリームを使うことが大切です。最近の商品に は、日焼け防止指数(SPF)が表示されており、きちんと使えばかなりの効果が期待できます。 日焼けは予防対策でかなり防ぐことができますが、ついうっかり日焼けをしてしまったという時の対処法について触れておきます。日焼けは正式には「日光皮 膚炎」と診断される立派な皮膚の病気です。日焼けは皮膚の炎症ですから、まず、できるだけ十分に冷やす事が大切です。水で濡らしたタオルをまめに替えるの が効果的です。抗炎症作用をもつローションの使用もよいでしょう。重傷の場合には、ステロイド剤のスプレーを使う事もあります。入浴や飲酒は炎症を悪化さ せるのでいけません。ひどい日焼けはやけどと同じです。翌日になっても改善しない時や紅斑や水疱の程度が激しい場合には医療機関を受診してください。
■口の中が痛むとき家庭での対策