4 第三種の伝染病
第三種の伝染病は、伝染病のうち学校教育活動を通じ、学校において流行を広げる可能性があるものが分類されている。そのため、新たに経口感染症である腸管出血性大腸繭感染症及び、従来からの眼の伝染病と「その他の伝染病」が分類された。なお、旧第三類の伝染病である結核は飛沫感染することから今回第二種に移行した。
出席停止の期間の基準は、共通して「病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまで」となっている。
腸管出血性大腸菌感染症、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎
腸管出血性大腸菌感染症
- ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌による感染症である。全く症状のないものから軽い腹痛や下痢のみで終わるもの、さらには頻回の水様便、激しい腹痛、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし、時には死に至るものまで様々である。有症者の約6〜7%は、下痢などの初発症状発現の数日から2週間以内に、溶血性尿毒症症候群(HUS)又は脳症などの重症合併症が発症する。平成8年8月厚生省は腸管出血性大腸菌感染症を指定伝染病に、さらに文部省は学校において予防すべき伝染病の第三類「その他の伝染病」として取り扱うように通知をした疾患である。
- 病原体:腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)。熱に弱いが、低温条件には強く水の中では長期間生存する。少量の菌の感染でも腸管内で増殖後に発症するので(感染型・生体内毒素型)、食中毒菌よりも赤痢などと同様の感染症である。
- 潜伏期間:4〜8日
- 感染経路(発生時期):主として飲食物からの経口感染である。少ない菌量(100個程度)でも感染する。夏期に多い。
- 症状:症状のないものから下痢(水様便)、腹痛、血便が様々な程度で現れる。激しい腹痛と頻繁にみられる水様便及び著しい血便を認めるときは、出血性大腸炎である。さらに約6〜7%に溶血性尿毒症症候群(HUS)、脳症などが発症する。なお、HUSの特徴はベロ毒素による血栓性微小血管炎形式の急性腎不全であり、破砕状赤血球を伴った貧血、血小板減少、腎機能障害を示すと考えられている。
- 罹患年齢:全年齢層(発症し、かつ重症化しやすいのは子どもと高齢者である。患者の約80%が15歳以下である。)
- 治療方法:下痢、腹痛、脱水に対しては補液など対症療法を、また止痢剤の使用は毒素排泄を阻害する可能性から使用しないこと、抗菌剤使用の可否については議論があるが、発症早期には抗菌剤の経口投与が勧められている。
- 予防方法:手洗いの励行、消毒(トイレ等)、食品の加熱及び良く洗うことの三点である。二次感染にも注意が必要である。なお、腸管出血性大腸菌感染症の取扱いについては、文部省発出の関連通知を参照のこと。
- 登校基準:有症状者の場合には、医師によって伝染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。無症状病原体保有者の場合には出席停止の必要はなく、手洗いの励行等の一般的な予防方法の励行で二次感染は防止できる。
流行性角結膜炎
- 伝染性角結膜炎を.呈する眼の疾患である。学校ではプール施設内で感染することが多い。
- 病原体:主にアデノウイルス8型
- 潜伏期間:1週間以上
- 感染経路:プール水、手指、タオルなどを介して接触感染をする。
- 症状:急性濾胞性結膜炎を呈し、眼瞼腫脹、異物感、眼脂があり、偽膜を伴うことも多い。点状表層角膜炎を合併して、視野に関わる部位の角膜に傷が残ると、後遺症として視力障害を残すおそれがあるが、子どもには少ない。
- 罹患年齢:全年齢層
- 治療方法:対症療法
- 予防方法:手洗い、タオル等眼に触れるものの貸借をしないことなどの注意が大切である。プールの一時的な閉鎖を必要とすることもある。
- 登校基準:眠症状が軽減してからも感染力の残る場合があり、医師により伝染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。
急性出血性結膜炎
- 結膜下に出血を起こすのが特徴の結膜炎である。アポロ11号が月着陸に成功した1969年にガーナで流行が起こり、世界中に伝播したので別名アポロ病と呼ばれた。我が国では1989年の流行が最初である。
- 病原体:主としてエンテロウイルス70型
- 潜伏期間:24〜36時間
- 感染経路:アデノウイルスによる結膜炎と同様に接触感染である。感染力が強い。
- 症状:症状は急性濾胞性結膜炎であり、眼瞼腫脹、異物感、眼脂の他、結膜下出血がある。偽膜は伴わないときもある。経過は1週間位である。極めてまれだがポリオ様麻痺を合併した症例の報告がある。
- 罹患年齢:全年齢層
- 治療方法:対症療法
- 予防方法:眼脂、分泌物に触れない注意が必要で、手洗いの励行、洗面具・タオルなどの共用をしないことなどの注意が大切である。
- 登校基準:流行性角結膜炎と同様である。