重症疾患に使われる薬(2) 【プロタノールーL proternol】 1A=0.2mg/ml 一般名塩酸イソプロテレノール。合成された純粋なβ刺激剤。β受容体の直接 刺激作用による気管支拡張(β2)、心臓刺激(β1)、末梢血管拡張(β2) などを有し、心拍出量を増加する。しかし、心拍数も増加し、心筋酸素消費量 も増加する。また伝導時間と房室結節不応期を短縮する。 [用 量]5A=1mgを生食か5%グルで100ml(10μg/ml)と し、0.5〜10μg/分(3〜60滴)の範囲で、心拍数、血圧、 尿量などを参考にしながら調整する。心拍数110以上、期外収縮 発現時は用量を減少する。 [代 謝]効果発現はすみやかで、効果持続は約15分。半減期2時間30分。 50%がそのまま排泄され、25〜35%がCOMTによって代謝 される。薬理効果の終結は代謝ではなく、アドレナリン作動性ニュ ーロンへの摂取。 [副作用]紅潮、発汗、振戦、頭痛、神経過敏、頻脈、狭心症、不整脈 [注 意]投与前に hypovolemia を補正しておく。虚血性心疾患、高血圧、甲 状腺機能亢進症などの患者では慎重に投与。 [配合禁]メイロン、リドカイン、バルビタール、アミノフィリンなど 【ヘパリン heparin】 1ml=1000単位 ヘパリンナトリウムとヘパリンカルシウムがあるが、一般に使われているのは 前者。抗トロンビンV(ATV)の活性増大により、トロンビンを阻害する抗 凝固薬。凝固因子]U、]T、\、]、(おそらくZも)の活性を中和する作 用もある。 [用 量]DIC:議論の多いところであるが最近では5〜15単位/kg/ 時間の点滴静注(50kgで6000〜18000単位/日)が推 奨されている。凝固異常の激しい例では少ない方の量から開始し、 凝固異常の改善とともに徐々に増量するのが無難。しかし、激しい 下血、頭蓋内出血などの場合は直ちに局所からの出血を増強する可 能性があるので、ヘパリンの使用は諦める。 肺塞栓症:5000単位を静注後、1万〜2万単位/日で持続静注。 全血凝固時間を対照値の2〜3倍、またはPTTかAPTTが対照 値の1.5〜2倍になるように投与量を調節する。 [代 謝]効果発現はすみやかで、効果持続は短い。半減期は90分。薬理作 用上の半減期は用量に比例(100単位/kgで56分)。 主に肝で代謝され、尿中に排泄される。5000単位以上の投与で は未変化体の排泄が増加する。 [副作用]出血、血小板減少症(治療初期に起こることが多い)、骨多孔症 [注 意]1.高齢の女性や肝機能低下の患者では、出血の危険が増加する。過 量投与の場合は、直ちに投与を中止し、必要ならプロタミンで中 和する。 *プロタミン(1A=100mg/10ml) ヘパリン1000単位に対して、10mgを与える。 具体的には、最終投与したヘパリンと同じmlを投与すれば よい。ただし、1回50mgを越えないこと。 2.ヘパリンの作用はATVを介しているので、AT3の活性が60 %以上を保つように補充する必要がある。 *ノイア−ト、アンスロビンP(ヒトAT3 500倍/10 ml/1V)。DICで使用するときは、ヘパリンの持続点 滴静注下に1日1500倍(30倍/kg)を静注する。 [配合禁]アミノグリコシド、メペリジン、ハイドロキシジン、プロメタジン (ピレチア)などとは配合禁忌。 [相 互]甲状腺ホルモン(T3・T4)、ヨード摂取を増加することがある。 【ヘルベッサー herbesser】 1A=10mg、50mg(凍結乾燥粉末) 一般名ジルチアゼム(diltiazem)。末梢血管、冠血管などの血管平滑筋および 房室結節において、細胞内へのCaの流入を抑制することにより、血管拡張作 用及び房室結節伝導時間の延長作用を示す。 [容 量]不整脈のコントロールに使用するときは、1回10mgを約3分で 緩徐に静注。高血圧に対して使用する場合は、1回10mgを約1 分で緩徐に静注するか、5〜15μg/kg/分の速度で点滴静注 する。 [代 謝]静注時の降圧作用は2分後に最大となり、約30分持続。半減期は 約2時間。おもに肝で代謝されるが詳細は不明。 [適 応]上室性の頻脈性不整脈、高血圧のコントロール [副作用]頭痛、血圧低下、徐脈、AVブロック、食欲不振、過敏症状など [相 互]カルバマゼピン、ジゴキシンの血中濃度を上昇。筋弛緩剤の作用を 増強。吸入麻酔剤の心伝導抑制作用を増強。 【ボスミン 】 1A=1mg/ml 一般名アドレナリン(adrenalin)。心臓のβ1受容体と末梢のα、β2受容体 に作用するカテコールアミン。心筋の収縮力を高める陽性変力作用、心拍数の増 加、心停止から洞調律へと変化させる陽性変時作用(β)、血管収縮作用(α) 心室細動の細かい波を粗くして除細動しやすくする作用などを有する。 [用 量]皮下注、筋注1回0.2〜1mg。静注1回0.25mg以下。 極量3mg/日 [代 謝] [適 応]心停止、ショック、気管支喘息発作 [副作用]心悸亢進、不整脈、過敏症状、頭痛、めまい、悪心、振戦 [注 意]高血圧、動脈硬化症、甲状腺機能亢進症、糖尿病では慎重に投与。 アシドーシスの強い患者ではききにくい。メイロンとの混注により 効果半減(pHの変化により)。 【マンニトール mannitol】 20% 300ml 浸透圧利尿剤の一つ。尿細管でわずかに再吸収を受けるが、尿中にそのまま の形で排泄される。近位尿細管で水とナトリウムの再吸収を抑制し、カリウ ム、カルシウム、リン酸の排泄を増加する。pH5〜7。浸透圧比約4。 [用 量]1)急性乏尿患者の診断:20%マンニトール100ml(20g) を5〜10分で投与する。尿量と比重を1時間毎に測定し、50 ml以上の尿量が得られた場合を陽性とする。50ml以下の場 合、もう一度投与し、反応がみられない場合は、急性尿細管壊死 として治療を開始する。 2)頭蓋内圧や眼内圧亢進の治療:1.5〜2.0g/kgを30〜6 0分で投与する。必要に応じて繰り返す。1日200gまで。 3)急性腎不全の予防:1)のあと、50gの20%マンニトールを 1時間で投与する。その後、尿量を50ml/時間となるように 300mlを8時間前後で投与する。 [代 謝]効果発現は利尿効果が1〜3時間、頭蓋内圧減少は30分。効果持 続は3〜8時間、半減期は15分。 [適 応]難治性浮腫、急性尿細管壊死で尿量増加。薬物中毒で排泄促進。脳 浮腫の軽減。急性乏尿患者の腎機能の評価。 [副作用]体液と電解質の異常、低ナトリウム血症、高浸透圧、細胞内脱水、 肺水腫、うっ血性心不全など。特に腎機能低下例で注意。 [注 意]腎機能低下例では副作用が発現しやすく、重篤な腎不全では禁忌。 静注か点滴が原則。点滴セットにはフィルターを付ける。20%以 上の溶液に電解質を加えてはいけない。 【ミオブロック mioblock】 1A=4mg/2ml 一般名臭化パンクロニウム(pancuronium bromide)。非脱分極性筋弛緩剤の1 つで、麻酔中の骨格筋弛緩や人工呼吸中の患者管理に使用される。 [用 量]静注:初回量0.08mg/kgとし、25〜60分毎に0.02〜 0.04mg/kgを投与する。 点滴:50mg/500mlの溶解液とし、1.5〜2mg/時間 (15〜20ml/時間)の速度で投与する。 [代 謝]効果は用量依存的に発現する。半減期も用量に比例して延長する。 0.04mg/kg:効果発現は45秒、最大効果は4.5分、効果 持続は1時間以内。 0.08mg/kg:効果発現は30秒、最大効果は3分、 効果持続は1時間以内。 主として腎代謝、一部肝臓も関与。 [副作用]不穏、呼吸抑制の延長、頻脈、血圧上昇、局所反応 [注 意]腎機能低下や hypovolemia の患者では副作用がでやすい。頻脈の患 者には慎重に投与。投与前に電解質の異常を補正しておく。 アンプルは冷蔵庫に保存。溶解液をプラスチックの注射器で保存し てはならない。溶解液は24時間は安定。色調の変化後は使用禁。 バルビタールとは配合禁忌。 [相 互]1)筋弛緩を減弱:アセチルコリン、抗コリン剤、K、Caなど 2)筋弛緩を増強:ハロセン、キニジン、Mg、アミノグリコシド、 ポリミキシンB、クリンダマイシン、三環系抗うつ剤、K喪失性 薬剤(利尿剤・緩下剤)など 【ミラクリッド】 1V=5万単位、10万単位 一般名ウリナスタチン。人の尿由来の抗トリプシン剤で、分子量67000の 高分子であるが、異種蛋白でないため重篤な副作用は少ない。トリプシン、エ ラスターゼ、リパーゼなどの酵素を阻害するほか、ライソゾーム膜安定化作用、 心筋抑制因子(MDF)産生抑制作用、腎機能低下抑制作用などを有するとさ れている。 [用 量]1)急性膵炎:1回2.5万〜5万単位、1日1〜3回 1〜2時間で点 滴静注。症状にあわせて漸減する。 2)急性循環不全:1回10万単位、1日1〜3回静注または点滴静注。 [代 謝]静注後の半減期は約40分。 [適 応]急性膵炎、慢性再発性膵炎の急性増悪、急性循環不全 [副作用]ときに過敏症状、白血球減少、肝機能異常、下痢、血管痛などをみる。 [注 意]FOY、グロブリン製剤との混注禁、また溶解後はすみやかに使用。 【ミリスロール】 1A=5mg/10ml、1V=25mg/50ml 一般名ニトログリセリン。ISDN同様、舌下錠、軟膏、注射など種々の剤型 がある。静脈系に血液を貯留し、前負荷を減少させ、冠動脈や虚血心筋組織の 側副路血流を増加させる。後負荷と心拍出量に対する影響は少ない。 [用 量]1)ニトログリセリン舌下錠(1T=0.3mg)1回1〜2T 屯用 2)バソレ−ター(2%軟膏 6mg/cm)1回1〜5cm、1日3〜6回 3)ミリスロール:狭心症薬としては、0.1〜1.5μg/kg/分 で使用。降圧では5μg/kg/分まで。 [代 謝]1)舌下錠:1〜2分で効果発現、15〜30分効果持続。内服は無効 2)軟膏:15分で効果発現、4〜8時間効果持続。 3)静注:効果発現はすみやか、効果持続は短く半減期は30分。 ほとんどが肝で代謝される。 [適 応]急性心不全、低血圧維持、狭心症、異常高血圧の救急処置 [副作用]頭痛、めまい、顔面紅潮、起立性低血圧、頻脈 [注 意]1)舌下錠は化学的に不安定。開封後は冷蔵庫で保管し、2〜3カ月に 交換。舌先にピリピリしなくなったら無効と考えてよい。内服して も全く無効。最近ニトログリセリンの揮発性を押え、保存性にすぐ れた製剤ニトロペン(1T=0.3mg)が発売された。 2)ミリスロールは通常の点滴セットに吸着するので専用のものを使用 する。脳血流量を増し、頭蓋内圧を上昇させる。又肺の低酸素性血 管攣縮を抑制して、PaO2を低下させることがある。 * 体重別に目的の用量を投与するときの原液1分間あたりの滴数(ml/hr) ug/kg/min 0.10 0.25 0.50 1.00 1.50 3.00 ---------------------------------------------------------------------- 40kg 0.48 1.20 2.40 4.80 7.20 14.4 50kg 0.60 1.50 3.00 6.00 9.00 18.0 60kg 0.72 1.80 3.60 7.20 10.8 21.6 70kg 0.84 2.10 4.20 8.40 12.6 25.2 ---------------------------------------------------------------------- 【メイロン 】 1A=20ml(16.7mEq) 一般名7%重炭酸ナトリウム [用 量]BE×体重×0.25(ml) [代 謝]HCO3+H+ H2CO3 CO2+H2O [適 応]代謝性アシドーシス [副作用]大量投与でアルカローシス [注 意]Naイオンを多く含み浸透圧比が5倍であり、容量負荷になるので 注意が必要(90mlで生食500mlに相当)。 [配合禁]Ca剤、カテコールアミンなどと混注禁 【メキシチール】 1A=125mg/5ml 一般名塩酸メキシレチン。リドカインと同じくクラス2bに属する抗不整脈剤。 作用機序はリドカインとほぼ同じであるが、本剤は経口投与も可能。 [用 量]1)1回静注法:通常1回2〜3mg/kg(1A=125mg)を 生食または5%グルなどで希釈し、モニター下に5〜10分かけ て投与する。 2)点滴静注法:0.4〜0.6mg/kg/hrで投与する。 2A=250mgを100mlとした場合の1分間当りの滴数( ml/hr)を下の図に示す。 mg/kg/hr 0.4 0.5 0.6 ---------------------------------------- 40kg 6 8 10 ---------------------------------------- 50kg 8 10 12 ---------------------------------------- 60kg 10 12 14 ---------------------------------------- 70kg 11 14 17 ---------------------------------------- [代 謝]静注時の作用持続時間は約2時間。主として肝で代謝され、腎より 排泄される。 [適 応]心室性不整脈(心室性期外収縮・心室頻拍など心室性頻脈性不整脈) [副作用]消化器症状、精神神経系症状(頭がぼーっとする・しびれ感など) 徐脈、低血圧。 [注 意]1日投与量が450mgを越える場合は副作用の出現の頻度が増す ので注意。リドカイン、プロカインアミド、キニジン、Ca拮抗剤、 β遮断剤などは作用増強。 [禁 忌]重篤な刺激伝導障害(完全房室ブロックなど) [配合禁]ソルダクトン、ヘパリン、ラシックスなど 【ラシックス lasix】 1A=20mg 一般名フロセミド。ヘンレ上行係蹄と近位および遠位尿細管において、ナトリ ウム再吸収を抑制する強力な利尿剤の1つである。肺うっ血と腎血管抵抗を減 少させ、血行動態に変化をもたらす。 [用 量]20〜120mgを1分以上かけゆっくり投与する。初回投与は少 量とし、患者の状態により適量まで漸増していく。 [代 謝]効果発現は5分、最大効果は30分。効果持続は2時間。経口投与 の場合はそれぞれ30〜60分、6〜8時間、6〜8時間。半減期 は30〜70分。腎不全では延長。経口投与でも非経口投与と同じ 効果が得られる。60〜80%がそのままの形で尿中に排泄され、 残りは糞便中と少量の代謝産物が尿中に排泄される。 [副作用]体液と電解質の異常、低Cl性アルカローシス、低血糖、多尿、血 清カリウム減少、難聴(通常は可逆性) [注 意]スルフォンアミドに交差過敏性がみられる。 腎不全などで大量使用の場合でも1日1gまで。 糖質液、ビタミンB複合体、ビタミンC剤など酸性溶液との混合は 避ける。血中アンモニア、アミラーゼ、血糖、尿酸などを上昇させ ることあり。 [相 互]セファロスポリン:腎毒性増強の可能性あり。 ステロイド、アンフォテリシンB、緩下剤:K喪失を助長 アミノグリコシド:聴力障害の危険を増強する。 【リスモダンP】 1A=50mg/5ml 一般名ジソピラマイド。Ta群に属する抗不整脈剤。キニジン様作用があるが、 キニジンより副作用が少ない。 [用 量]初回静注量:50〜100mgを10mg/分で投与。 維持量を点滴静注で投与する場合は4〜8μg/kg/分。 [代 謝]有効血中濃度は2〜5μg/ml。50%ずつ腎および肝より排泄 される。経口投与の場合は約90%が吸収される。 [適 応]上室性・心室性頻拍症、心房細動、心室性期外収縮 [副作用]陰性変力作用(Ta群中最も強い)、血圧低下、伝導障害、頭痛 抗コリン作用(口渇・排尿障害)、口腔内違和感、頭痛 [注 意]陰性変力作用が強いので、心不全患者に投与する場合には注意。 【硫酸キニジン quinidine】 1T=100mg キナ cinchona アルカロイドの1つで、心筋の興奮性と刺激伝導を抑制し、抗 不整脈効果をあらわす。さらに、強い迷走神経遮断作用を有するので、洞結節 の刺激発生頻度はあまり変化させない。房室結節に対しても迷走神経遮断作用 によりむしろ不応期を短縮させる方に作用する [用 量]100mg投与し、副作用(血圧低下・発疹の出現)を認めなけれ ば、1日300〜1200mgを3〜4分割で投与する。 [代 謝]消化管よりの吸収が良好なため、経口投与の生物学的利用率は非経 口投与と同等。硫酸キニジンはキニジンを87.4%含む。最大効 果は1.3時間、有効血中濃度は2〜6μg/ml、半減期は6〜 7時間。80%が肝で水酸化物となり、代謝産物と未変化体は腎か ら排泄される。 [適 応]上室性・心室性の期外収縮や頻拍症 [副作用]下痢、低血圧、キニーネ中毒(頭痛・耳鳴・難聴)、伝導障害、 頻拍性不整脈、血小板減少症、皮疹、発熱 [注 意]心房細動、心房粗動では房室伝導が改善し、かえって心拍数が増加 して、危険な状態に陥ることがあるので、前もってジギタリスを投 与して房室伝導を抑制しておく必要がある。また心室内伝導障害や 酸塩基平衡異常の患者では慎重に投与。重篤な腎不全、うっ血性心 不全、アルカリ尿の患者では、排泄が減少するのでモニターを厳重 にする。投与中にQT延長、QRS幅の増大が見られたら、減量ま たは中止。 【レギチン regitin】 1A=10mg/1ml 一般名フェントラミン(phentolamine)。α遮断剤の1つで、細動脈と静脈の 拡張作用を有し、後負荷と前負荷を軽減する。このため、心係数、一回拍出量、 心拍数の増加を引き起こす。 [用 量]5%グルか生食で10A=100mg/100ml(1mg/ml) とし、3〜20γ/kg/分で投与。(50kgの人で3滴1γ) [代 謝]効果発現はすみやか。作用持続時間は3〜10分。10%がそのま まの形で尿中排泄。残りは不明。 [適 応]褐色細胞腫の診断、心不全、末梢循環不全、術後低心拍出量症候群 [副作用]低血圧、頻脈、不整脈、狭心症、紅潮、脱力感、めまい、鼻閉 [注 意]投与前にHypovolemiaを補正。心筋の酸素需要は増大するので、 虚血性心疾患に対しては慎重に使用。耐性発現あり。 【ワソラン Vasolan】 1A=5mg/2ml 一般名ベラパミル(verapamil)。カルシウム拮抗剤の1つで、Caの緩徐な内 向き電流を抑制し、洞結節に対しては自動能を低下させ、房室結節においては、 興奮伝導に対して抑制効果を発揮する。reentry 抑制により上室性頻拍を改善 し、房室伝導抑制により心房細動や心房粗動の心拍数を減少させる。WPW症 候群では心拍数増加の危険があるので慎重に投与する。血管平滑筋の弛緩と心 筋収縮力抑制作用も有する。 [用 量]1回5mgを2〜5分で投与する。無効の場合、さらに5mg投与 する。心拍数調節の目的で持続点滴する場合は、5A=25mgを 生食で100mlとし、5〜10滴で投与する(30〜60mg/ 日)。 [代 謝]効果発現はすみやかで、最大効果は5分、効果持続は6時間以下。 肝で代謝をうけるが、代謝産物も薬理活性があるといわれている。 [適 応]上室性頻拍症の治療及び予防。心房細動のレートコントロール。 [副作用]徐脈、低血圧、ショック、過敏症状、めまい、悪心、嘔吐 [注 意]SSS、心原性ショック、U度以上の房室ブロック、ジギタリス中 毒では禁忌。 [相 互]ジゴキシン:ジゴキシンの濃度を増加する。プロプラノロール:陰 性変力作用を増強。ニフェジピン:ニフェジピンの作用増強。 【ワーファリン】 1T=1mg、5mg クマリン系の薬剤で、ビタミンK依存性の凝固因子U、Z、\、]の生成を抑 制する。第Z因子は半減期が5時間と短いため、48時間以内にPTの延長が 始まるが、第U因子の半減期は60時間と長いため、安定した抗凝固効果が得 られるまでには少なくとも1週間かかる。 [容 量]はじめの3日間は5mg、その後PT、TTなどのコントロール指 標を参考に投与量を調節する。 [目 標]コントロールの指標は、PTで対照の1.5倍、TTで10〜25% [注 意]胎盤通過性があるため、妊婦には禁忌。ワーファリン投与中の筋注、 腰椎穿刺、鎖骨下静脈穿刺は慎重に行い、できれば避ける。 [相 互]納豆、リファンピシン、グリセオフルビン、バルビツレート、経口 避妊薬は作用減弱。ザイロリック、タガメット、サリチル酸、イン ダシン、キニジン、ST合剤、経口血糖降下剤は作用増強。アルコ ールは効果を不安定にするため好ましくない。 [副作用]出血が重篤な場合は、FFPを投与する。ビタミンK10mgの投 与でもワーファリンの効果は6〜12時間で消失するが、その後2 週間はワーファリンが無効になるためこの方法は好ましくない。 【ペルジピン】1A=2mg、10mg。 一般名塩酸ニカルジピン。ニフェジピン類似の構造式を有するカルシウム拮抗 剤で、脳血管拡張作用・冠血管拡張作用・血圧降下作用を有する。ニフェジピ ン同様心拍数を増加させるが、房室伝導に対する作用はほとんどなく、抗不整 脈作用には乏しい。心筋の抑制作用は常用量ではないとされ、末梢血管抵抗の 低下による心拍出量増加作用を有する。降圧作用はニフェジピンに比しやや緩 徐であるが、副作用は少なく使いやすい薬剤である。 [用 量]2〜10μg/kg/分で点滴静注。目的値まで血圧を下げ、以後 血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。10mgを生食また は5%グルで100mlとすると50kgの人で60滴で開始。 [代 謝]半減期は50〜60分。主として肝で代謝される。 [適 応]手術時の異常高血圧の救急処置 [副作用]悪心、嘔吐、食欲不振、便秘、下痢、顔面紅潮、のぼせ、動悸、下 肢浮腫、倦怠感、頭痛 [注 意]作用の強さには個体差があるので急激な血圧低下に注意、過度の低 血圧時はノルアドレナリンにて昇圧をはかる。 【抗ヒスタミン剤】 分 類 一 般 名 商 品 名 1 回 量 特 徴 -------------------------------------------------------------------------- エタノールアミン ジフェンヒドラミン レスタミンコーワ(10%) 30-50mg 作用強力、鎮静・ レスタミンカルシウム 1A(20mg) 止痒作用も強 -------------------------------------------------------------------------- エチレンジアミン 作用緩和、眠気少。 止痒作用やや弱 -------------------------------------------------------------------------- プロピルアミン マレイン酸 クロール・トリメトン 1A(10mg) 作用強力、眠気少。 クロルフェニラミン 臨床効果は中等度 ------------------------------------------------------------- d-マレイン酸 ポララミン(2mg) 2mgx1-4 クロルフェニラミンの2倍の クロルフェニラミン 抗ヒスタミン作用 -------------------------------------------------------------------------- フェノチアジン エチレンジアミンと同じ。 しかし鎮静作用あり -------------------------------------------------------------------------- その他 シプロヘプタジン ペリアクチン(4mg) 4mgx3 クレマスチン タベジール(1mg) 1mgx2 眠気少。持続性 ジフェニルピラミン ダンリッチ(5mg) 5mgx2 上気道炎治療薬 -------------------------------------------------------------------------- [特 徴]エタノールアミン系は作用が強いが、催眠作用も強い。レスタミン カルシウムはCaの消炎・鎮痒・血管透過性抑制効果を加味。しか し175mg臭化Caを含むためゆっくり静注(塩化Ca1AのCa は400mg)。プロピルアミン系は臨床的に使いやすく、眠気など の副作用も少ない。ダンリッチはヨウ化イソプロパミド・塩酸フェニ ルプロパノールアミンを含有する合剤でおもに風邪症候群の治療に使 用される。 [薬 理]H1レセプターに対してヒスタミンと競合してアレルギー作用を改善。 構造がアトロピンと類似しているため、興奮、口渇、頻脈、便秘、 複視、尿閉などのアトロピン様作用を有する。 [適 応]蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、輸血後のアレルギー反応、薬疹、中毒 疹(エタノールアミン系は無効) ・参考文献 1.天羽敬祐監訳:クリティカルケアの実際 中外医学社 1986 2.吉矢生人ほか:集中治療のてびき 南江堂 1986 3.水島 裕ほか:今日の治療薬 1989年版 南江堂 1989 4.薬の使い方 Medicina Vol.24 No.10 1987 医学書院 5.内科レジデントマニュアル 第2版 医学書院 1987 6.日本医薬品集(第6版)日本医薬情報センター編 薬業事業社 1981 7.石崎高志:循環器疾患の薬物療法 南江堂 1986
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